●不快感を隠しても、火に油を注ぐだけ

「心の中の不快感を避けようとすればするほど、より孤立して、不安になり、気分がさらに落ち込むこともある」と、ザッカーマンは私に言った。状況に対する正当な感情的反応を、感じるだけでなく、認めなければならない。それを避けたり無視したりすれば、支えが必要な時に孤立して、メンタルヘルスの問題は心の弱さと同じだという烙印を長く植えつけることになる。

「感情的な痛みが存在しないふりをすることによって、それがどのような感情であれ、何らかの意味で悪いものだ、危険なものだ、というメッセージを自分の脳に送信している。脳が自分は危険な状況にあると考えると、体はそのように反応する。たとえば、脈が速くなる、呼吸が浅くなる、危険だと誤って認識した状況を不必要に避けようとする自然な欲求が生じる、などだ」

「感情的な不快さを避けようとすると、それが肉体的な苦痛を伴う場合でも、無意識のうちにそれらの感情をより強く、大きく、圧倒的なものにしてしまう。自分の感情と向き合おうとしないか、効果的かつタイムリーな方法で処理できないと、睡眠障害や薬物の乱用、あるいは急性ストレス反応、不安、鬱状態、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクが高まるなど、数多くの精神的な問題を招くことは科学的に指摘されている」と、ザッカーマンは言う。

 ●感情にうまく対処する方法がある

 ポジティブになりすぎることは有害でもあるということに納得がいかないなら、あなたが気にかけている人(自分自身を含む)に及ぼす影響を考えてみよう。困難の最中にいる友人にポジティブな肯定の言葉をかけることによって、自分は相手を支えているのだと感じるかもしれないが、実際は、すでに傷つきやすい状態にある人に対し、その感情を否定してさらに傷つけているかもしれない。

 あなたが発信するポジティブな肯定は、あなたの友人が自分の感情にうまく対処できていないという考えにつながる。あるいは、彼らの目の前に問題が存在しないかのように示唆することによって、無意識のうちにガスライティング[編注2]をしているのかもしれない。

 トキシック・ポジティビティは、支えを必要としている人に対し、彼らが現実に経験していることとは完全に不釣合いな感情的反応をつくり上げて、さらなる重荷を背負わせることになる。

 苦しんでいる人の声に耳を傾ける時は、ポジティブな考え方を持ちつつ、激励の言葉は求められるまでかけないこと。ザッカーマンは次のような言葉を避けようと提案する。

「ポジティブ・バイブで行こう!」
「このくらいで済んでよかったんだよ」
「さあ、笑って。くよくよしない!」
「何を泣いているの? 大丈夫」
「いろいろうまくいっているのに、何を悩んでいるの?」
「乗り越えよう」

 むしろ、相手の感情を肯定する言葉を選んで、あなたが相手の反応を期待せずに、ただ支えるためにそばにいることを伝えようと、ザッカーマンは言う。

「いまは大丈夫だと思えなくてもかまわない」
「自分が感じたいように感じればいい」
「あせらないで。私が一緒にいるし、話を聞くよ」
「そんなふうに感じていいんだから。あなたの気持ちが大切だから」

 自分が感じたことを感じればいい。感情を抱き締めて、過ぎていくのを待とう。他人に対しても、彼らが自分の感情の波に身をゆだねることを見守ろう。それで大丈夫だから。

【編注】
1)邦題は『サイコだけど大丈夫』。
2)誤った情報を信じ込ませたり些細な嫌がらせをしたりして、相手が自分を疑い、責めるように仕向けること。


HBR.org原文:It's Okay to Not Be Okay, November 10, 2020.