Chemistry/Getty Images

先が読めない不確実な状況の中では、目の前の問題をどうにかして解決しようと考えてしまう。しかし、そこで的確な意思決定を下すためには、自分、あるいは自分たちにとっての「成功」とは何かを明確に定義する必要がある。筆者はそれを「成功のビジョン」と呼ぶ。事前に成功を定義することは、仕事かプライベートかにかかわらず、いかなる決断を下す際にも重要だ。


 ドワイト・アイゼンハワー米国大統領は、「計画に価値はないが、計画立案にはあらゆる価値がある」と言ったことで知られる。アイゼンハワーが第2次世界大戦中、連合国遠征軍最高司令官としてノルマンディー上陸作戦の計画責任者を務めたと聞けば、この言葉の重みが一段とよくわかるかもしれない。

 アイゼンハワーは、目標を定め、さまざまな見方を考慮し、あらゆるバイアスや思い込みに疑問を投げかけ、一連の行動を設計し、潜在的な障害点を見つける必要があることを理解していた。

 慎重に計画を練り上げることに時間(ノルマンディー上陸作戦の場合は数カ月)をかければ、成功を確実に保証することはできなくても、そのプロセスが無駄にならないことをアイゼンハワーは知っていたのだ。成功とはどのような形で、失敗はどのようなコストをもたらすか、そしてその行程をなぜ辿るべきかを、チーム全員に理解させることができたからだ。

 幸いにして私たちは、世界大戦の戦況を逆転する計画を練る必要はない。それでもいまは、シンプルな決断を下すことでさえ、ノルマンディーの海岸に兵士たちを上陸させるのと同じくらい難しく感じられる。

 それは仕事でも、プライベートでも変わらない。コロナ禍で多くのことが宙に浮いたままの中、私たちは不確実性(必要な情報を持たない)と曖昧性(最善の成果は解釈の問題になる)という2つの大きな敵と戦っているのだ。

 どのくらいの不確実性に耐えられるかは、個人や組織によって異なる。不確実な状況を回避しようとする人もいれば、それに耐えられる人もいる。しかし、不確実な状況を積極的に歓迎する人はほとんどいない。

 未来は常に不確実なものであり、不確実性をゼロにすることはできない。だが、専門家に相談したり、手元にない情報を探ったりすることで、不確実性を低下させることはできる。たとえば、新型コロナウイルス感染症がどう広がるのか、それが長期的にどんな影響をもたらすかは、まだ完全にはわかっていない。しかし、エビデンスに基づき、ウイルスに感染する可能性を低下させる措置があることは知っている。

 データを集めても、曖昧性を低下させたり、解消したりすることはできない。私たちの意思決定は究極的に、みずからの価値観に基づく個人的な判断である。それゆえに自分にとって、家族にとって、あるいは組織にとって何が重要かを掘り下げて考える必要がある。