5. 切り捨てるべきものは、容赦なく切り捨てる

 不確実な未来に向けて準備をするために必要なのは、新しいスキルで武装したり、新しい人的ネットワークを育んだりすることだけではない。何を――あるいは誰を――切り捨てるべきかについて、戦略的な選択を行うことも重要だ。

 当然、これまで多くの時間や労力、エネルギーを費やした物事を捨てるのは難しい。それに、人は誰しも過去へのノスタルジアに浸りがちだ。不確実な状況に直面している時は、とりわけその誘惑に駆られやすい。しかし、前に進むためには、すでに必要がなくなったものを冷徹に見極めて、新しいものを追求するための余裕を生み出さなくてはならない。

 ランスフィールドの同僚の一人は昔から、複数の仕事に並行して携わる「ポートフォリオ型のキャリア」を志し、その一環として企業の取締役を務めたいと思っていた。しかし、仕事とボランティア活動でいつもスケジュールをぎっしり埋めていたため、このままではその目標を達成するのは難しいことに気づいた。

 これまでスケジュールを詰め込んできた代償として払っていた機会コストを自覚した同僚は、ほかの人たちへの権限委譲を進め始めた。正式な権限委譲プランをつくり、依頼に対してもっときっぱりと「ノー」を言うための台本も作成し、そうしたデリケートな会話の練習もした。こうして不必要な課題を減らし、負担を軽減したことにより、取締役就任の可能性を探る時間的・精神的ゆとりをつくり出せた。

 人間には、不確実性を避ける習性が備わっている。しかし、どんなに懸命に避けようとしても、不確実性から完全に逃れることはできない。それよりも、不確実性を成長の機会と位置づけたほうが得策だ。新しいスキルを磨いたり、新しい職に就いたり、キャリアを全面的に転換したりするチャンスと考えればよい。

 不確実な未来への向き合い方に関して、お手軽な解決策はない。それでも本稿で紹介した戦略を実践すれば、どのような未来がやって来ても、それに対処するツールが手に入るだろう。 


HBR.org原文:5 Strategies for Reinventing Your Career in Uncertain Times, November 13, 2020.