3. 未来の自分にとって有益な能力を育む

 平常時であれば、まずどのような職に就きたいかを考えて、その職を得るために必要なスキルを習得しようとするのが普通だ。しかし、不確実性が極度に高い時期には、このようなアプローチはリスクを伴う。目指している会社や業種が、思わぬ大激変に見舞われないとも限らないからだ。

 そこで筆者らは、言ってみれば「スキル・ファースト」のアプローチを提唱している。具体的にはまず、私生活上・職業上の大きな目標に向けて成長するために、どのようなスキルを学ぶ必要があるかを考える。そのうえで、そのスキルに適した職を探す。

 筆者らの知人の一人は、「グローバル・リーダー」になりたいと強く思っていた。そして、この難しい目標を追求するためには、特定の求人の条件とは関係なく、異文化コミュニケーションのスキルを改善しなくてはならないと考えた。

 どのようなスキルを習得すべきかを決めて、そのスキルを磨くうえでは、以下の戦略を実践することが有益だ。

現在の職で新しいスキルを訓練する機会を見つける。前出の知人は、正式な役職をいっさい変えずに、さまざまな属性を持つ同僚たちと関係を育むために努力を傾けた。それを通じて、同僚たちの多様な経験を理解したいと考えたのである。

オンライン上のプログラムやコースを探す。この知人は、異文化間マネジメントに関するいくつかのコースを受講して、自信を深め、経験不足が原因の失敗を避けることができた。

非公式のメンタリングや正式なコーチングを通じて、学びを与えてくれる人を見つける。あなたが学習で活用できる最良の資産は、自分の人的ネットワークだ。それに、そのネットワークのなかの人たちは、あなたのスキルが高まったことを知ったときに、それを宣伝してくれる可能性もある。筆者らの知人は、社内のある女性にメンターを引き受けてもらい、その人の電話やミーティングに立ち会う機会を確保した。これにより、実務について貴重な知見を得ることができた。

4. 小さく始める

 不確実な状況に直面すると、人は身動きが取れなくなりかねない。それを克服するためには、すぐに変えられることに目を向けるのが効果的だ。

 課題があまりに大きいと感じる時は、それを小分けにすればよい。対処しやすい小さな課題にわけて、一つずつ片づけていくのだ。たとえば、本を執筆しようと思うと、課題の手ごわさに気後れするかもしれない。それでも、充実した骨子を作成するだけなら、半日あればできるかもしれない。

 まず何から手を着ければよいか見当がつかない時は、「後悔する恐れがない」ことから始めてみてはどうだろう。状況がどのように変わっても有益な行動を取るのだ。履歴書に磨きをかけたり、ソーシャルメディアのプロフィール欄を見直したりといったことをすればよい。

 また、自分にこう問いかけるのもよいかもしれない。「喜びを感じられて、今日すぐに実行できる小さな行動は何か」「1週間時間があれば、私は何を成し遂げられるか」

 ある企業幹部は、転職を検討していた。しかし、長年にわたり日々の業務に忙殺されてきたため、スキルと人的ネットワークを築き直すのは容易でないと感じていた。

 そこで手始めに、自分の人的ネットワーク(大学時代の友人、以前の顧客、友人関係を通じて知り合った人たち)の人たちに、週に5人ずつ電話をかけることにした。多くの業界の情報を集めて、さまざまな職種や組織について知ることが目的だった。

 すると数カ月もすると、電話で話した人たちが、この人物にふさわしいと思う求人の情報を寄せてくれるようになった。やがて、それが転職につながった。