不妊症に配慮したリーダーシップ

 リーダーや人事マネジャーが不妊治療中の社員の苦しみについて知らずに、社員の将来の希望を評価したり、勤務評定を怠ったりすれば、そのような社員を不利に扱うことになる。そうなると、せっかく会社が社員のダイバーシティ(多様性)を重んじ、離職を抑えようと努めていても、その努力が台無しになりかねない。

 社員は、会社が自分のことを支援してくれると思えなければ、私的な問題を語ろうとは思わない。もしあなたが自社の方針を決めたり、方針に影響を及ぼしたりできる立場にあるのなら、不妊治療中の社員を支えるために以下の行動を検討してみよう。

 ●沈黙に終止符を打つ

 不妊を人生のごく当たり前の一要素と位置づけ、オープンに話題にしよう。「不妊」「人工授精」「流産」といった言葉を避けるべきではない。不妊について当たり前に話せる環境をつくることは、不妊治療をめぐる沈黙に終止符を打ち、女性たちが不妊治療とキャリアプランについて上司と話しやすくするための重要な一歩になりうる。

 ●不妊症に配慮した制度をつくる

 不妊症は慢性疾患の1つと位置づけられているにもかかわらず、ほとんどの企業では、不妊治療が福利厚生制度の対象にされていない。不妊治療を受けている社員は、ほかの慢性疾患を患う社員が利用できる病気休暇などの支援制度を利用できないのだ。

 妊娠前に休暇を取得できるようにしたり、勤務時間や業務負担を減らしたり、カウンセリングを提供したり、資金面の支援を用意したりすれば、社員が不妊治療を乗り切るのを助けることができる。また、自社が家庭に優しい雇用主だという強力なシグナルを発することにもなるので、採用活動と離職対策の面でも効果が期待できる。

 ●社内のマネジャー向けに指針を設ける

 不妊治療が仕事に及ぼす影響についてマネジャーを教育し、どのような問題解決策があるかという指針を示そう。マネジャーは、通院と仕事を両立することの難しさを頭に入れておくべきだ。そして、不妊治療中の社員に十分な配慮をし、通院のために職場を退出しやすい勤務スケジュールを認めることの意義を知る必要がある。

 そのような仕組みづくりは、不妊治療中の社員が職場で支援されていると実感し、治療と仕事を両立しやすくするうえで、大きな効果があるかもしれない。また、不妊治療を受けるうえで病気休暇の取得が不可欠な場合があることも理解するべきだ。

 ●柔軟なキャリアプランを認める

 不妊症をめぐる状況は、一人ひとりで大きく異なる。不妊治療を受けている間は、ストレスの比較的少ない役職に移りたいと考える女性がいる一方で、あえて手ごわい業務に挑みたいと考える女性もいる。

 後者のタイプの女性は、妊娠後に仕事のペースを緩めざるをえなくなることを覚悟して、いまのうちに仕事に打ち込みたいと思っていたり、やり甲斐のある仕事に取り組むことを通じて、不妊の苦しみを相殺したいと考えていたりするのだ。

 ストレスの少ない職を望む女性には、いずれ態勢が整った時に再び元のペースで働けるよう支援する仕組みが歓迎される。一方、過酷な仕事を望む女性のためには、不妊治療の関係でスケジュールが不安定になっても仕事上の目標を追求しやすいように支援する体制が有効だ。会社が柔軟なキャリアプランを認めることは、両方のタイプの人にとって好ましい材料になる。

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 不妊の問題に悩まされているカップルは少なくなく、しかもその数は増え続けている。それにもかかわらず、ほとんどの場合、企業の制度はそれを念頭に置いていないのが現実だ。

 その点、不妊治療を受けている社員を支援しようとする企業は、優秀な人材を採用し、自社につなぎとめることができる。そして、自社のインクルージョン(包摂)の取り組みを後押しする効果もある。

 批評家でダイバーシティ・インクルージョン・コンサルタントのヴェルナ・マイヤーズの言葉を借りれば、「ダイバーシティとは、パーティに招待されること。インクルージョンとは、パーティでダンスに誘われること」だという。ビジネスリーダーは、不妊治療で避けられない試練を理解し、社員が不妊治療を受けやすくして、もっと多くの社員が「ダンス」に参加できるようにすべきなのだ。


HBR.org原文:Employers, It's Time to Talk About Infertility, November 11, 2020.


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