日本の強みを生かす4つの成長産業

松江 英夫(Hideo Matsue)
デロイト トーマツ グループ CSO(戦略担当執行役)
経営戦略・組織改革/M&A、経済政策が専門。フジテレビ「Live News α」コメンテーター、中央大学ビジネススクール客員教授、事業構想大学院大学客員教授、経済同友会幹事、国際戦略経営研究学会理事。主な著書に『両極化時代のデジタル経営——ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社、2020年)、『自己変革の経営戦略~成長を持続させる3つの連鎖』(ダイヤモンド社、2015年)など多数。デロイト トーマツ グループに集う多様なプロフェッショナルのインサイトやソリューションを創出・発信するデロイト トーマツ インスティテュート(DTI)の代表も務める。

松江 「断絶なき成長」に向けては、村上さんがご指摘されている人口減少社会において高付加価値の産業を育てることが鍵だと思います。

村上 高い生産性を誇る小国は、高付加価値の産業を「選択と集中」でしっかり育てています。オランダにおける農業や、ルクセンブルクにおける金融業のように、日本でも国際競争力のある成長産業を育てることが大きな課題ですね。

松江 産業の選択と集中には、「日本社会の課題解決につながり、デジタル・テクノロジーによる高度化が可能で、かつ雇用に与えるインパクトが大きいこと」が次世代の成長産業の要件になると思います。

 こうした観点から、私は特に3つの領域に注目しています。第1に、コロナショックで重要性がさらに高まった「ヘルスケア」、第2に、脱炭素社会構築の鍵を握る「エネルギー」、第3に、暮らしの安全安心を担保する「国土強靱化」です。加えて、これらの産業で活躍する人材を育成するための「教育」も、第4の産業分野になるでしょう。

村上 非常に納得感があります。付け加えるなら、それらの成長産業において、ぜひ「コンシューマー」の視点を生かしてほしい。高齢化の進展とともに、特にヘルスケアの領域における消費の在り方は激変しています。世界に先駆けて高齢化社会を経験している日本は、その変化をいち早くキャッチできるという意味で大きな優位性があります。

 私の母は48歳でドラッグストアを立ち上げ、約20年間で年商200億円のビジネスに成長させました。当時、まだ高齢化はビジネスチャンスと見なされていませんでしたが、島根県という高齢化の先進地で親を介護していた母は、肌感覚でシルバーエコノミーの重要性を理解していました。そして、その感覚を武器に、いち早く介護用品ビジネスのニーズをキャッチしたのです。これを世界スケールに広げれば、ものすごく大きなチャンスが見えてきます。個人消費支出はOECD平均でGDPの6割程度を占めています。消費行動の変化を的確に捉えることは、成長性の高いビジネスに直結するのです。

松江 面白いですね。課題先進国であることのポテンシャルを、いかにプロダクトやサービスに昇華させていくか──。とても重要な視点です。その延長線上には、日本の消費者の質に対する感度の高さを強みにして、日本が“世界のR&Dセンター”としての機能を担う、という方向性もあり得ます。そして、日本発の高付加価値な製品やサービスを生み出し、消費地を国外に広げていく。そうすれば、日本の人口が減って国内市場がシュリンクしても、国外にどんどん市場が広がっていきます。

村上 夢が広がりますね。ぜひ、実現させましょう!