新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、「両極化」を一気に顕在化させ、経済や教育における格差を拡大させている。しかし、このコロナショックは日本にとって大きなチャンスになり得る、というのがOECD(経済協力開発機構)東京センター所長の村上由美子氏の持論だ。平均的に高い能力を有する人的資源に恵まれ、協調のマインドが根付く日本は、ポストコロナの世界が求める社会の「底上げ」に貢献できるポテンシャルが高い。その強みを十分に生かすためには、国、企業、個人が緊密につながって新たな社会システムを構築する必要がある。2021年、新たな年を迎え、ポストコロナの世界で日本が目指すべき方向性と未来像を展望する。

新時代のリーダーシップの鍵は「多様性」

松江 さて、新しい年が始まりましたが、2021年にどのような展望をお持ちですか。

村上 パンデミックの終息に向けて、引き続き努力が必要な年になることは確かです。ですが、これまでのコロナ対応で得た教訓を糧に、いよいよ来年は社会に前向きな変化が兆すのではないかと考えています。特に、コロナ禍を機に劇的にスピードアップした医療と教育の変化には注目しています。

松江 人間は生存の危機に瀕すると大事なものに気付きます。SDGs(持続可能な開発目標)のようなゴールが世界で共有されたのもコロナ禍がもたらしたプラス面ですね。

村上 逆に、コロナ禍を機に日本が世界から改めて学ばねばならないのは「多様性」です。新型コロナウイルス感染拡大に対する各国の対応はさまざまで、評価を上げた国もあれば、下げた国もありました。明暗を分けたポイントは「ダイバーシティ(多様性)」ではないかと私は考えています。女性首相の国は先進的、というような単純な話ではなく、トップの意思決定に影響を与えるメンバーに多様性がある国ほど、危機に適切に対応できていたように思うのです。そして残念ながら、日本はまだトップを取り巻く幹部層の同質性が高いままです。

松江 新時代には、日本もグローバルな視野から相対化してリーダーシップの在り方を進化させていかなくてはいけませんね。

村上 ハーバード・ビジネススクールのリンダ・A・ヒル教授は、不確実性の高い時代にふさわしいリーダーは、トップダウン型でカリスマの強いタイプではなく、羊の群れを後方から緩く方向付けるような「羊飼い型」だと言っています。変化の激しい環境では、どれほど先見の明がある人でも百発百中で未来を予測するのは不可能です。だとすれば、チームの多様性を高め、とっぴな意見も否定せず受容した方が最適解に近づける。ポストコロナのリーダーシップの肝は「唯一の答えを決める」ことでなく、「多くの可能性を提示できるシステム作り」にあるのではないでしょうか。今後ますますイノベーションが必要な日本にとって、目指すべきリーダーシップ像のヒントがここにあると思います。