自己認識を明確に持つことは
なぜ難しいのか

 人は自分についての判断を、「他者に及ぼす影響」ではなく「自身の意図」に基づいて下す傾向がある。このため、自分の振る舞いが他者からどう認識されるかという影響力の部分が見えにくくなる。

 社会科学者は長きにわたり、こうした盲点が生産的な対話をいかに阻害しうるかを実証してきた。アービンジャー・インスティテュートの言葉を借りれば、人は自己欺瞞という「箱」に閉じ込められている。そして組織学習に関する研究の先駆者クリス・アージリスの発見によれば、人には生まれつき防衛的思考をする傾向がある。

 実際、人はごく自然に、自分の成功はみずからの能力によるものと考え、自分の失敗は外部要因のせいにする。自己奉仕バイアスとして知られるこの傾向によって、自尊心は守られる反面、建設的なフィードバックを受け入れる能力が妨げられる。

 この問題をさらに悪化させるのがダニング=クルーガー効果だ。あるタスクを行うための能力と知識を欠いている人ほど、自分の遂行能力を過大評価するという傾向である。

 これが私たちの生まれ持った性質ならば、降参して諦めるほかはないのだろうか。そうではない。リーダーの自己認識を向上させるためには、さまざまな手段がある。しかし、コーチを雇ったり、チームエクササイズを通じて自己発見を促す社外研修に参加したりすることは、必須なのだろうか。

 ディスカッション型と体験型のアプローチ、および個人単位とチーム単位のエクササイズをどう天秤にかけるかによって、その答えは異なる。

 判断要素の一つは、学習体験のタイプである。

 対象がリーダー個人でもチームでも、強力な個人的気づきを促すためには、体験学習が有効だ。感情に響く体験の中で、驚きを通じて自己発見がもたらされる。

 たとえば、「自分は課題をうまく達成できると思っていたのに、容易に入手できる重要情報を見逃していた」という事実に気づかせることは、学習者への注意喚起として機能する。ただし、体験学習は「実際の業務」から離れた状況で行うため、時間とコストがかかる。

 対照的に、ディスカッション型のアプローチ――エグゼクティブコーチからリアルタイムで率直なフィードバックをもらうなど――は、もっとシンプルで柔軟性がある。しかし、感情に訴えかける度合いは低いかもしれない。

 もう一つの重要な判断要素は、実施対象をチーム全体とリーダー個人のどちらにすべきかである。

 これは主に、最大の目標はチーム(経営陣やプロジェクトチームなど)を精鋭集団に育てることなのか、それとも一人のリーダーを支援することなのか次第で決まる。リーダーシップ開発のために経営陣のスケジュールを組む際の制約(移動、時間、利便性、コストなど)も、問題となるかもしれない。

 これら2点に関する判断から、4つの選択肢が生まれる。どの選択肢も、新米・熟練を問わずリーダーの盲点を克服する一助となる。うち2つは、実際の業務の場で行うディスカッションだ。残り2つは業務外の活動で、新奇な体験を通じて気づきと自己認識を促すことが目的である。