仕事に対する期待を適正にする

 仕事と子どもが同時に家に飛び込んできた際、多くの人は仕事と家庭生活の境界線が崩れることへの心構えができていなかった。

 インタビュー参加者のほとんどが夏の時点でもなお、3~4月に起きた激変から回復する途上にあった。平時の生活に戻ることを望んだものの、子どもの世話に時間を取られ、セルフケアがほとんどできなかったのだ。

 筆者らが対話した母親の多くにとって、パンデミック前のレベルのパフォーマンスを上げることは、いまだに不可能である。それでも中には、雇用者が期待を変更して、そのような制約に積極的に対応してくれたと答えた人もいた。

 参加者の一人は、幹部が「現在50%の業務ができるなら、それは成功だと私は考える」と従業員に告げたことを教えてくれた。あるグラフィックデザイナーは、上司が「私に仕事を振ってもよいかと文字通り許可を求めてくれた。『理解がある』以上の配慮だ」と語った。

 どちらの女性も、こうした認識を示してもらうことで自分が苦闘していることを理解してもらえたと感じ、雇用者の従業員に対するゆるぎないコミットメントを感じたと答えている。

 ●推奨

 子育て中の従業員を支援する勤務時間制度を打ち出し、誰もが利用できることを周知徹底しよう。研究によると、コンプレストワークウィーク(1週間の労働時間を変えずに就業日数を減らす勤務形態)1日当たりの勤務時間の短縮で、バーンアウト(燃え尽き症候群)を減らせることがわかっている。

 大きな影響を受けている従業員(働く親たちなど)に配慮して、マネジャーは職務の詳細を変更したり、組織開発のプロセスを定めたり、従業員にジョブ・クラフティングさせたりすることもできる。皆の置かれた状況を考慮することで、従業員がより広範に能力開発する機会を創出できるようになり、それがキャリアアップを促進する。

 しかし、仕事優先の文化では、そのような制度を容易に受け入れられないマネジャーがいるかもしれない。したがって、企業はリーダーたちに研修を受けさせ、新しい制度を使いこなせているかどうかを評価しよう。そうすることで、組織全体が支援に真剣に取り組んでいることを後押しできる。

共感し続ける

 インタビュー参加者によると、パンデミックの初期には熱心に対応し、共感してくれた上司も、夏場には遠隔勤務にうんざりして「共感を使い果たしてしまったようだった」という。

 ズームでのミーティングに遅刻したり背後で子どもが走ったりしていても、4月の時点では許された。ところが、その後ムードが変わったと複数の参加者が打ち明けた。ある人は「まだプレッシャーを抱えているのが忘れ去られたようだった。子どもたちはまだ家にいるのに!」と述べた。

 共感するとは、働く母親が直面する難問を理解することも含まれる。しかし、マネジャー全員が個人的に熟知しているわけではない。働く母親に対する偏見も加わるため、事はさらに複雑になり、助けを求めることに躊躇するワーキングマザーが多くなる。

 会計事務所のあるマネジャーは、助けを求めること自体が弱さやコミットメントの欠如だという偏見があるため、「助けを容易に求められない状況で、助けを求める全責任を従業員自身が負わされている」と語った。

 ●推奨

 従業員が何を求めていて、どう感じているか、そしていまの働き方が快適かどうかを、マネジャーは積極的に尋ね続ける(あるいは尋ね始める)べきだ。そのような会話を当たり前に交わせるようにするため、リーダーたち自身が苦労していることを打ち明けたり、弱い面を見せたりしてもよい。

 職場で共感を示すことは、協業の強化や離職率の低下をはじめ、一連の望ましい結果につながる。とても単純なアプローチは、すべてのミーティングを皆の様子を尋ねるところから始めることだ。

 バーチャルミーティングはチームメンバーによる成功の報告から始めることが推奨されているように、彼らがどんな状況にあるかを尋ねる時間を設けるのもよい。そうすることで、参加者全員が知っているとは限らない生活上の経験に対する理解が生まれる。

 現在の生活や仕事は、いまだに普通の状態からかけ離れていることを忘れてはならない。従業員、特に働く母親たちは同情心や共感、理解をこれまで以上に必要としている。