では、リーダーは、どうやって目的意識を見出せばよいのか。

 指揮統制を重視する文化の下では、CEOが組織の目的を考え出すものと期待される。しかし、こうしたやり方では、考案された目的が支持されず、影響力を持たない可能性がある。

 英国のある銀行のリーダーは、部下たちにこう語った。「いま(新型コロナウイルスの)感染拡大による危機の中にあることは事実ですが、私たちにできることもあります。それは、すべての顧客が金融サービスの利用に関して安全に感じられるようにすることです」

 部下たちは、この言葉が善意に基づくものであることは理解していたが、この目標が達成不可能だと思っていた。目的を上から押しつけるのを避けるなら、それが自然に生まれるようにすればよい。

 コロナ禍の下、英国の国民保健サービス(NHS)の中では、この両方のアプローチが――リーダーが目的をつくり出すことと、目的が自然に発生してメンバーに共有されるようにすることが――(別々の地域で)実践されていた。

 一部の地域では、リーダーがこの非常事態で必要とされるのは、指揮統制型のリーダーシップだと確信し、みずからが主導権を握り、新しいスタイルを熱心に推し進めた。周囲の人たちに命令を発し、自分一人で新しいシステムを設計しようとし、みずからを意思決定の中心に据えたのだ。その結果、あらゆるものごとのペースが落ちてしまった。

 このようなリーダーのほとんどは、権力欲に突き動かされて行動していると批判されて、最終的には主張を撤回する羽目になった。求められることの大きさと難しさを理解できなかったために、痛い思いをしたのだ。

 しかし、ほかの地域では状況が違った。膨大な業務が殺到したことでNHSの巨大で複雑な階層型組織が崩壊し、その結果として、NHS内のさまざまな階層の間で、そしてNHSとほかの行政サービス(救急、消防・救援、介護)との間に、力強い協力と協働の関係が生まれた。新たな協力と協働は、これまで想像もできなかったほど円滑・迅速に形づくられた。

 このような地域のリーダーたちは、目的を上から押しつけたりはしなかった。それでも、メンバーは誰もが組織の目的をはっきり認識していた。その目的とは、どれほど困難だとしても、すべての患者のために適切な行動を取る、というものである。

「目標を達成できないのが当たり前になると、適切な行動を取ることがきわめて簡単になりました」と、ある医師は振り返っている。NHSのリーダー層が今後取り組むべき課題は、こうした目的を追求するために必要な自由と資源を確保するために戦うことだ。