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新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来、最前線で働く医師や看護師、あるいは食料品の販売や配達に携わる現場のスタッフは、自身を感染のリスクにさらしながら、仕事を続けてきた。先の見通しが持てない中、彼らはいま、かつてないほど情緒的サポートを必要としている。あなたが彼らを支えるメンターとしての役割を果たそうとするならば、何から始めればよいのか。長年にわたって、ヘルスケアに携わる専門職のメンターを務めてきた筆者らが、危機下でどのようにメンタリングを実行すべきか、その処方箋を提示する。


 9.11同時多発テロ発生直後のある日、筆者(フェッセル)は職場のカフェテリアに並んでいた。頭の中には、まだ不安が渦巻いている。その時、メンターの一人を見かけた。同じ部門のシニアメンバーだ。

 私たちは挨拶を交わすと、すぐに事件の話を始めた。その時、彼が漏らした一言を、私はいまもよく覚えている。「怖いよな」。それはシンプルだが、説得力のある言葉だった。

 その瞬間、私の気持ちは落ち着きを取り戻し始めていた。それまで抱いていた不安は、「自分だけではない」という気持ちに変わった。その感覚は大きな影響を及ぼした。

 新型コロナウイルス感染症の危機が訪れるまで、筆者らは3人合わせて50年近くにわたり、ヘルスケアに携わる専門職のメンターを務めてきた。その経験から、とりわけ最前線で働く人たちにとって、メンターの存在がいかに重要かを学んできた。

 この何カ月もの間、医師や看護師、食料品店のスタッフ、郵便配達員をはじめとする多くの人が、身の危険を感じながらも、複雑で見通しが持てない状況下で、仕事を続けてきた。しかも、相変わらず終わりは見えない。

 彼らはいま、かつてないほど情緒的サポートを必要としている。だが、上司は必ずしも頼りにできない。彼らも目の前の問題に対処したり、組織を回したりすることで手一杯かもしれない。自分の昇進を左右する上司に助けを求めれば、弱音を吐いたと思われる恐れもある。

 そのため、スタッフが安定を取り戻すためには、メンターが重要な役割を果たすことになる。すなわち、スタッフが人知れず動揺したり、恐怖に陥ったり、燃え尽きたり、混乱した時に、話を聞いて、落ち着きを取り戻すのを助ける人物のことだ。もちろん、会話の内容はすべて非公式となる。

 もしあなたが、最前線のスタッフに対してメンターの役割を果たしているなら、ます最初にすべきは、自分のケアだ。あなた自身の感情が適切な状態になければ、誰かの情緒的サポートをすることはできない。

 自分の感情が強固なものになって初めて、メンティー、すなわち指導や助言を受ける相手に、情緒的サポートや具体的な対応策を提供できるようになる。