アルゴリズムが差別と偏見を助長するリスクへの関心が高まっているが、人工知能(AI)の役割が拡大することによる問題はそれだけではない。アルゴリズムの設計・開発に関与する人と、アルゴリズムの指示を受けて働く人という役割が固定化され、経済的不平等がより拡大する可能性がある。この問題を解決するうえで、ビジネスリーダーが果たすべき責務は大きい。


 アルゴリズムによる差別と偏見のリスクに対する関心が高まり、厳しい監視の目が向けられ始めたのは、まったくもって当然のことだ。しかし、社会で人工知能(AI)の役割が拡大することの悪しき副作用は、それだけではない。仕事の性格そのものが変わり、社会のシステムに不平等が根を張りつつある。

 ロボットに雇用を奪われる未来を恐れる人は多いが、恐れるべきことはそれだけではない。多くの人がアルゴリズムに管理される職に就くようになり、未来への明るい見通しがほとんどなく、昇進の可能性も皆無に等しい状況に追い込まれた時、どのような問題が生じるのか考えてみてほしい。

 昔から愛されてきた立身出世物語の典型的なパターンの一つは、恵まれない境遇で育った人物が、企業の郵便物整理係やレジ係、工場作業員といった現場の最下層の職から出発して、頂点まで上り詰めるというストーリーだ。現実はハリウッド映画で描かれるほど容易でないが、旧来型の企業では、底辺から頂点までのし上がる道は、少なくとも閉ざされてはいなかった。

 マクドナルドでCEOを務めたチャーリー・ベルは、現場の店舗でハンバーガーをつくるアルバイトスタッフとして同社でのキャリアを出発させた。ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バラ会長兼CEOは工場の組み立てラインの作業員、ウォルマートのダグ・マクミロンCEOは同社の配送センターのスタッフから出世を果たした。

 それに対して、いま配車サービス大手のウーバーでドライバーとして働いている人の中で、やがて同社でマネジャー職に就ける人がいったいどれだけいるだろうか。ましてや、その中から同社の経営を担う人物がどれだけ出てくるだろうか。

 将来、アマゾン・ドットコムの幹部を務める人物の中に、同社の商品を顧客に送り届けたり、自社倉庫の棚を補充したりするスタッフとして働き始めた人がどれだけ含まれると予想できるだろうか。

 食料品配達サービスを行うインスタカートの創業者兼CEO(現在は大富豪だ)は、同社のサービス開始後、最初に受注した商品をみずから配達したが、そのような経営者が今後どれくらいあらわれるだろうか。