(4)行動志向のストーリーを語る

 あなたが具体的に語ることにより、聞き手の不安を和らげられる。聞き手に実践的なアドバイスを送り、明確な方向性を示せば、聞き手を勇気づけて行動を促し、あなたの語るストーリーを聞き手自身のストーリーに変えることができる。

 私の顧客は最初、OKRの導入について、仰々しく聞こえるけれど、実際のところは実のない常套句で説明した。「これにより、私たちの働き方が変わります。我が社で何を成功と見なすかが変わるのです。顧客との距離を狭めることができるでしょう」

 こうした主張が間違いだったわけではない。しかし、このような言葉では、OKRを導入することにより社員の日々の仕事がどのように変わるのかが伝わらなかった。社員が新しい目標を設定し、その目標の達成に向けて動き始めた時、社員にとって何が変わるのか。その点が見えてこなかったのだ。

 代わりに、社員がどのように行動を変える必要があるかに焦点を当てて話したほうが効果的だっただろう。

「固定的な工程表をつくって、具体的な活動の内容と開始時期をあらかじめ決めてしまうのではなく、四半期ごとに状況確認を行い、顧客の定着率、平均注文額、顧客獲得コストなど、顧客関連の指標に照らし合わせて進捗をチェックするものとします。
 これにより、幹部やミドルマネジャーがプロダクトチームに仕事を割り振るのではなく、それぞれのチームが責任を持って、目標達成のために最善の計画を立てるようになります。
 また、私たちは、チームがこのような移行を遂げるのを助けるために、トレーニング用のコースと長期のコーチングを用意します。もし興味があれば、上司に申し出てください。すぐ開始できるようになっています」

(5)謙虚なストーリーを語る

 同僚やシンポジウムの聴衆や採用担当者の前で自分の失敗について語る場面を想像しただけで、たいていの人はぞっとするだろう。しかし、真に謙虚な姿勢を示せる人は、成長の余地があり、学習する能力を持っていることを周囲に知ってもらえる。

 謙虚な言葉は、あなたのストーリーに信頼性を持たせる。常に自分が正しいと主張するつもりなどなく、新しいことを学び、必要であれば方向転換することもやぶさかでないと、聞き手に伝わるからだ。筆者の経験から言うと、自分がほかの人たちに助けられていて、物事がうまくいく場合ばかりではないと認めることほど、聞き手との絆を深められる言葉はない。

 OKRの社内告知のケースで謙虚なストーリーを語るとすれば、たとえば次のようなストーリーになったかもしれない。

「前回、我が社が目標設定のシステムを変更しようとした時のことを覚えている人も多いでしょう。当時、私は最高執行責任者(COO)を務めていて、変革の旗振り役の一人でした。その取り組みが悲惨な失敗に終わったことを、多くの人はご記憶のことと思います。
 あれは私の失敗でした。私が拙速に変革を推し進めすぎたのです。社内が変革に対応するのを助けるためのサポート体制を築けていませんでした。この時の経験から、私は多くのことを学びました。すべてのみなさんからの提案を歓迎します。そして、このOKRの導入を成功させるために力を貸してください」

 ストーリーテリングの質により、あなたの活動の成功と失敗が分かれる場合もある。稚拙なストーリーは、どんなに素晴らしいアイデアも台無しにしかねない。一方、強力なストーリーは、気が重くなるようなアイデアでも、聞き手への気遣いと共感を持って伝えることができる。

 良質なストーリーを語るためには、練習の積み重ねが必要だ。しかし、ストーリーテリングがうまくいけば、あなたのチームと組織、そしてあなたのキャリア全体に大きな好影響が及ぶだろう。


HBR.org原文:Storytelling Can Make or Break Your Leadership, October 19, 2020.


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