『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2021年1月号の特集テーマは「ESG経営の実践」。ESG(環境、社会、ガバナンス)に対する投資家の関心は年々高まっており、企業が環境問題やダイバーシティ&インクルージョンの問題に取り組んでいるかどうかは、投資先選定の重要な指標となった。

 しかし、多くの企業リーダーがその事実を把握していながらも、具体的に何をすべきかという確信が持てず、他社と横並びの施策に留まっているケースが多い。ESGの取り組みを企業価値向上につなげ、長期的成長を実現するにはどうすればよいのか。

 ハーバード・ビジネス・スクール教授のジョージ・セラフェイム氏による「ESG戦略で競争優位を築く方法」では、ESG投資の議論を先導する筆者が、企業がESG活動を通じた差別化を実現し、投資家から評価されるための5つのアプローチを提示する。

 サステナビリティ経営の概念が浸透する一方、経営者がESGの要素を戦略に取り込もうと考えても、取締役会の抵抗に遭うことは少なくない。取締役会は、自社を長期的な成長に導くために存在しているはずだが、実際には短期的な価値創出を重視しがちである。

 取締役会が本来の役割をまっとうするための原動力となるのがパーパスだ。オックスフォード大学サイード・ビジネススクール客員教授のロバート G. エクルス氏による「取締役会が担うサステナビリティ経営の責務」では、取締役会のパーパス遂行を支援するフレームワークを提示する。

 企業のESGパフォーマンスを評価することの重要性は、次第に高まっている。今日では、企業が投資を受ける場合に留まらず、収益や評判を左右する要素としてもESGが認知されるようになった。

 サイモン・マクマホンは「ESGのパフォーマンスをどう評価するか」の中で、ESGのパフォーマンス評価を行う際は、対象企業がどのようなリスクにさらされているか、またそのリスクをどのように管理しているかを精査すると言う。そして企業においては、事業に関係する重大なESGリスクを把握することが課題であると説く。

 ESGの取り組みは、はたして企業価値につながるのか。企業経営者や投資家にとって関心の高いこのテーマに、エーザイ専務執行役CFOである柳良平氏が10年がかりで取り組んでいる。

 早稲田大学大学院客員教授としてファイナンス理論の専門家でもある筆者は、ESGと企業価値をつなぐモデルを構築し、エーザイのデータを用いて実証研究を行った。その結果、ESGに関わる一部の取り組みが5年、10年を経て企業価値を高めることがわかった。

 主要薬の特許切れという難題を克服し、エーザイが株価を約3倍に高めた背景には、ESGを重視する財務戦略の実行と、企業理念(パーパス)の重視、そして投資家との徹底対話があった。「ESGの『見えざる価値』を企業価値につなげる方法」では、その詳細が明かされる。

 米系JPモルガンなどでの金融・証券業務を経て、2001年に独立し、12年前に日本でコモンズ投信を創設するなど、国内外のファイナンス市場に精通する渋澤健氏による「ESG投資で資本主義を再構築する」では、投資家視点でのESG投資の意義を論じてもらった。

 それは、ステークホルダー資本主義の理念がベースにある、未来志向の投資思考である。渋澤氏の高祖父で、「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一が、およそ100年前に『論語と算盤』で説いた合本主義に通じている。