謙虚さ

 会話に好奇心を持って向き合えば、必ずといってよいほど、終わった時に一つは賢くなっているものだ。ただしそれは、3番目の要素である謙虚さも持ち合わせている場合に限る。

 人の経験について真摯に知ろうとして、驚きや気づき、自分自身の成長につながるものが何も見つからないということはほとんどない。私たちが最も大切にしている考えの多くは、白紙の状態からそこへ至ったのではない。それが厳然たる真実だ。

 キリスト教徒かイスラム教徒か、保守かリベラルか、コカ・コーラ派かペプシ派かにかかわらず、私たちの考えは、私たちが取捨選択する事実よりも、自分を重ね合わせる集団によって形づくられている

 相手の話に真摯に耳を傾けた時、人は自分が抱いていた信念がいかにもろい礎の上に成り立っていたかを思い知り、しばしば謙虚になる。その時には、そうした点を認める誠実さを持つことだ。

 相手に同意できる部分、特に自分がそれまで大切にしてきた「事実」の放棄を伴う部分を認めようとすればするほど、相手も安心して同じようにしてくれる可能性が高まる。

 タクシーに乗って10分、私は自分の番だからと運転手の話を止めるのが嫌になった。自国の外交政策を1万2000キロメートル離れた場所から見て気づかされたことに驚き、相手の話を止めたい気持ちはなくなっていた。

 ドライブを終えた時、その運転手にとって世界を見る目が変わったかどうかはわからない。だが、私のほうは変わった。考えが大幅に変わったわけではないが、微妙なニュアンスが加わり、私はそのことをありがたく思っている。

 あなたが本当に謙虚になれば、ネッドとの間にも同じことが起きる。意見するつもりで会話に臨んではいけない。

 ネッドの世界がどのように成り立っているのかを理解するつもりで臨もう。それができれば、彼が持っている情報と経験を踏まえて、彼がどのようにしていまの結論にたどり着いているのかが理解できるようになるだろう。

 嘲りの気持ちは、相手から学ぼうとするのではなく、相手を改心させようとする現れである。

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 今度、職場に政治の話を持ち込もうとしている同僚に不安を感じたら、息をつこう。次に、判断しようとする気持ちを好奇心に置き換える。線引きをして、会話を適切な時間と場所に移し、バランスの取れたものになるように心がけつつ、必要に応じて出口を用意する。そして確信ではなく、謙虚さを持つことだ。

 これらを実践しても、すぐに世界平和が訪れるわけではないだろう。だが、職場での会話が有意義なものになる確率は確実に高まる。

編注:大統領選前に実用化を前倒しする動きがあったことを踏まえている。


HBR.org原文:What to Do When Your Coworker Brings Up Politics, October 21, 2020.


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