線引き

 会議でのネッドの「手に負えない発言」は、彼がビジネス会議を政治的議論の場に変えていたことが問題だった。

 ネッドに会話を持ちかける時に、会議で守るべきラインを尊重するよう頼む必要がある。ネッドがあなたとの会話に興味を示し、自分の見解を話したがっているとわかったら、最初に次のように釘を刺すことが必要だ。

「それでネッド、今後は会議でそういう発言をするのは控えてほしい。そういう時間や場ではないから。いいかな?」

 会話が脱線することが心配な場合にも、はじめに線引きを明確にしておくのがよい。いきなり意見を交わすのではなく、まずは舞台を整える。相手に線引き、つまり礼儀に則り、バランスよく話し合いを進めるための基本ルールへの同意を求めるのだ。

 特定の規則を課せられることに猛反発する人でも、話し合いのマナーについてはたいていの場合、二つ返事で承諾してくれる。感情がエスカレートする前に同意を得ておけば、相手も自分で自分を監視して、ある程度の健全さを維持できる場合が多い。

 相手がそうしない場合に備えて、誰かがほかのルールに違反した時の対処法についても線引きをしておこう。

 私がタクシーの運転手と会話を始める前に、どのように舞台を整えたかお教えしよう。口を挟めるタイミングがすぐには来そうになかったので、私はそれを待つことなく、彼の座席の後ろを軽くたたいて話を中断させ、次の提案をした。

「あなたのお考えには、非常に興味があります」と私は言った。

「そのお考えに、賛成する点も反対する点も出てくるでしょう。私にも同じだけ時間をください。最初の10分はあなたが話し、次の10分は私が話すというのはいかがでしょう。もしどちらかが相手に対して腹を立てたら、そこで話は終わり。その先は黙ってホテルに向かいましょう。うまくいけば、最後にはお互いに少し賢くなっているかもしれません。どうです?」

 運転手は心の底から笑い、振り返って正面から私を見据えて「そうしましょう」と言った。