何年か前に、私はロンドンのガトウィック空港から車で45分かかるホテルへ移動するために、タクシーに乗った。目的地を告げると、運転手はこちらを向いて「米国訛りですね。米国人ですか?」と聞いてきた。

「そうです」と私は答えた。

 運転手は目を見開き、首を伸ばして私を振り返り、荒々しく米国大統領を罵る言葉を放った。

 夜遅い時間で、私は疲れていた。気力がいる会話をする意欲が自分にあるかどうかを秤にかけ、その言葉を無視することも考えたが、「いや、できるはずだ。完全に同意できなくても、強い意見を持った人と話すことはできるはずだ」と思い直した。

「チップの心配、していませんよね?」。私はそう言って、鏡に映った彼の目に微笑んだ。

 彼は顔をほころばせて笑ったが、その笑みはすぐに消えた。そして再び罵声を吐き、今度は米国の外交政策をとうとうと非難し始めた。その声は大きくなるばかりで、話せば話すほど顔の赤みが増していく。息継ぎをする間だけかろうじて話が中断し、言いたいことが45分以上あるのは明らかだった。

 皮肉なことに、私がロンドンにいたのは、政治や感情の面でリスクのある会話をテーマに出版した共著について講演を行うためだった。その目的を考えれば、人に説教する前に、まずはみずから実践すべきだろう。そこで、残りの40分を意味のある会話に転換すべく試みることにした。

 それは見事にうまくいった。もちろん、ホテルに着いたが最後、その運転手に二度と会う必要はないとわかっていたが、それでも私は礼儀正しく、生産的な会話をするために努力した。

 あなたも今度、見知らぬ相手であれ他部門の同僚であれ、強い政治的意見を持つ人と話すことになった時には、次の3つを念頭に置いて話すとよいだろう。