イノベーションを起こそうと必死に取り組むにもかかわらず、新たなアイデアが枯渇し、衰退していく組織は少なくない。その原因は「知的な勇気」の消失にあると筆者は指摘する。現状に異議を唱え、反論し、挑戦する意欲のことだ。だが、それによって恥をかいたり、阻害されたり、何らかの処罰を受けたりする社会的リスクがあると、声を上げることを拒むようになり、組織は硬直化してしまう。本稿では、リーダーが脆弱性を認め、心理的安全性を育むことの重要性を論じるとともに、知的な勇気を創出するための7つの方法を提案する。


 組織がイノベーションをやめれば、衰退するのは時間の問題だ。しかし、企業が新たなアイデアを思いつかなくなる原因はどこにあるのだろうか。

 過去20年間にわたって、衰退した組織を数多く研究してきた筆者は、「知的な勇気(intellectual bravery)」が、自覚できない程度に少しずつ侵食されていく例を、いくつも目の当たりにしてきた。

 知的な勇気とは、恥をかいたり、疎外されたり、何らかの処罰を受けたりしかねないという社会的リスクがあっても、現状に異議を唱え、反論し、挑戦する意欲のことだ。

 知的な勇気が消失した組織は、「故意の無知(willful blindness)」が定着する。官僚主義は大胆さを葬り去る。効率は創造性を押しつぶす。そこから現状が硬直化し、停滞が始まる。

 知的な勇気の文化を築く責任は、リーダーシップにある。あなたはリーダーとして、全体の姿勢を定め、雰囲気をつくり、会社全体の規範を定義する。

 あなたの会社に知的な勇気の文化があるかどうかは、脆弱性が罰せられるのではなく、報われるパターンを確立できるかどうかにかかっている。以下に 2つの例で説明しよう。

 ●チームA:罰せられる脆弱性

 2019年、筆者はあるソフトウェア開発チームと1日を過ごした。自身の未来に大きな期待を持つ有能な人たちが集まっていた。

 ただし、このチームはスケジュールが遅れており、予算をオーバーし、思うように進行していなかった。メンバーは、それぞれが個人として確かな実績があるため、プロジェクトが失敗しそうだと察知して、それまで経験したことのないほど、不安やいら立ちが高まっていた。

 リーダーは、自分が好む特定のユーザーエクスペリエンス(UX)デザインについてチームに指示を出していたが、メンバーが異なる視点を提案しようとすると、話を切り上げて仕事に戻らせた。

 自分のUX のアイデアがうまくいっていないことをようやく理解した時、彼は怒りに任せて反応し、全員を集めたミーティングでチームの失敗を指摘した。

 これがメンバー全員の「自主検閲」の本能を呼び起こし、凍りついたような沈黙に閉ざされた。本音を口にすることはリスクが高くなり、メンバーはリスクを管理して、苦痛を回避し、損失を防ごうとするフェーズに後退した。

 これは妥当な反応でもある。リーダーはチームを鼓舞しなければならない、まさにその時に、集団的な麻痺状態を生み出したのだ。彼の行為は、過度の従順と、エンゲージメントの喪失と、批判的思考の欠如を招いた。