行動を起こす

 コロナ禍の到来を受け、このアプローチの有効性はいっそう高まっている。変革を成功させるためには必ず、従業員の個人的な目標と意欲が決定的に重要となる――これがブライトライン・トランスフォーメーションの主眼だからだ。テクノロジーや業務プロセスといった他の要素よりも、はるかに重要なのだ。

 アフターコロナの世界で組織が成功し、同時に従業員の燃え尽きと流出のリスクという課題にも対処するためには、以下2つの部分を至急見直す必要がある。

(1)アウトサイド・インを改めて実行する

 コロナ禍によって多くの業界でエコシステムの様相が変わり、多くの企業が存在意義を見失っている。

 エアビーアンドビーについて考えてみよう。同社は宿泊客のキャンセルによって10億ドルの損失を被りながら、ホストの損失分の補償に2億5000万ドルを支出している。以前と同じようには何一つ戻らないというのが、同社の現在の認識だ。

 社員に新たな現実への適応を促すために、経営陣はアウトサイド・インの変革施策に乗り出し、新たな北極星――自社を長きにわたって前進させるために追求したい変革目標――を見出したのだ。

 ブライアン・チェスキーCEOによれば、同社の新たな目標は「日々お家にゲストを受け入れる、また素晴らしい体験を提供してくださるホストのみなさまという、エアビーアンドビーの原点に立ち返る」ことだ。

 チェスキーと社員が見出したトレンドの一つは、「人々はいまやどこにいても仕事ができる」という認識が、コロナ禍の影響で広く受け入れられていることだ。このトレンドによって、ユニークな地域や文化を長期間旅行して体験したい顧客にサービスを提供する、新たな機会が開かれうる。

 合わせて、同社は事業の中核ではない活動――交通、ホテル、高級物件への投資など――の縮小を開始した。

(2)インサイド・アウトとアウトサイド・インを組み合わせる

 エアビーアンドビーはひとたび目標を確立すると、社員とともにインサイド・アウトのプロセスに乗り出した。個人とチームのビジョン・ステートメントを、大局的な目標と整合する形で考案させ、自社の新たな北極星に対する社員の意欲的な関わりを促したのだ。

 これは、昨今では多くの人々が見失っている「人間的つながり」を生むためでもある。事業再建に向けて社員の支援を求め、再度の成長と成功に向けた会社の努力に彼らがどう直接貢献できるかについて、意見を募っている。

 もう一つのアウトサイド・インとインサイド・アウトによる変革の取り組みは、タイの最大手銀行の一つであるカシコン銀行で進行している(筆者のクライアントであることを明記しておく)。

 同行の北極星は雇用の維持のみならず(コロナ禍でも全社員の雇用を継続した)、顧客である中小企業を守ることだった。何千もの顧客企業と緊密に連携し、レイオフの回避を条件にローン返済の期間を延長し、危機を乗り切れるよう支援した。この種の措置は通常、政府のみが実施するものだ。

 同行の取り組みは推計4万1000人以上の雇用を守った。国に大きく貢献することで、社員に目的意識と自信と忠誠心をもたらしたのである。

つながりをつくる

 私たちはコロナ禍によって、人間同士、そして自分と所属する共同体がいかにつながり合い、一体化しているかに気づかされた。

 重要な社会的意義に貢献したいという従業員の願望が、自社の北極星とどう結びつくのか――このことを理解してもらう機会を、リーダーはいまこそ与えるべきである。それによって従業員との絆を改めて深め、同時に精神的エネルギーの再充電を促すことができるのだ。

 どれほど多くの技術投資をしていても、従業員とのつながりの構築を先延ばしにすればするほど、自社の今後の成功に必要な人材を失うリスクが高まっていくのである。


HBR.org原文:Put Employees at the Center of Your Post-Pandemic Digital Strategy, October 15, 2020.


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