筆者はこれまでのキャリアを通じて、大きな変革に取り組む1000以上の組織を調査・研究し、100を超える組織に助言を提供してきた。最近の5年間で特に関心を向けてきたのは、DXのインパクトと、企業が成長のためにテクノロジーをどう活用できるかである。

 そこから学んだのは、DXの取り組みの大半は不成功に終わるということだ。しばしば大々的に失敗し、数千億ドルもの投資が無駄になり、従業員の意欲低下につながっている。

 筆者の使命は、組織がDXの取り組みでより望ましい成果を実現できるよう助言することだ。

 昨年にはプロジェクトマネジメント協会(PMI)と共同で、ブライトライン・トランスフォーメーション・コンパスという変革フレームワークを開発した。このモデルがコロナ禍の下でどう適用でき、組織のDX推進の取り組みにどうインパクトを与えるかが、筆者のごく最近の研究対象である。

 具体的には、このアプローチは「インサイド・アウト」と「アウトサイド・イン」を組み合わせるものだ。

 インサイド・アウトとは、個々の従業員に内在する最も重要な意欲を変革に結びつけること。アウトサイド・インとは、企業の戦略ビジョンを従業員が理解し受け入れることである。両方を組み合わせることで、組織の全員が同じ目標に向かって努力するようになる。

ブライトライン・トランスフォーメーション・コンパス

 ●アウトサイド・インのアプローチ

 従業員はまず、会社が目指す「北極星」(最も重要な目標)、および顧客インサイトとメガトレンドを理解し、受け入れなくてはならない。そうすることで、全員が同じ目標に向かって努力できるようになる。

・北極星:企業は変革に向けた自社のビジョンと戦略目標を、簡潔明瞭かつ人々の心に響く言葉で明示する必要がある。

・顧客インサイトとメガトレンド:すべての変革施策と全従業員の中に、顧客への深い理解を浸透させることが重要だ。現在の顧客と潜在顧客、未来に獲得したい顧客、そして彼らに影響を及ぼすメガトレンドについて理解しなくてはならない。

 ●インサイド・アウトのアプローチ

 従業員一人ひとりの意欲、つまり「個人的な北極星」と、全社目標および以下の要素とを結びつける。

・変革の実施体制:企業は変革を持続可能にするために、フラットで柔軟かつ職能横断的な組織構造を取り入れる必要がある。

・自発的な推進者:職能横断的な変革チームへの志願者を募る仕組みを設け、組織のあちこちにいる何人もの思想的リーダーの力を活用し、変革を加速させる。

・インサイド・アウトによる従業員の変革:従業員に変革を「自分ごと化」させる。そのためには、各従業員の強みを特定し、やりがいを喚起し、喜びの源泉を見つけるSEEフレームワークなどを用いてもよい。最終的な目標は、従業員の意欲を自社の北極星および顧客と結びつけることだ。