文化変革のプログラム

 乗り気を見せない消極的なCEOの意識を変えさせる努力に加え、3つの変革プログラムによって、組織を正しい方向へと動かすことができる。

 ●教育プログラム

 巧みに練られた教育プログラムを、組織のあらゆるレベルで推進すべきである。デザイン思考の訓練、グループでの問題解決、実践的なハッカソンといった体験的プログラムのほうが、単なる講義よりも効果的な場合が多い。

 異なる組織階層ごとに、職務に見合った訓練を提供すれば、アナリティクスとデータに基づく意思決定のメリットを示すことができる。たとえば、経営幹部は問題をフレーミングすることに重点を置き、現場・前線の従業員はアナリティクスが顧客関係に及ぼす影響を学ぶ、といった具合だ。

 こうした取り組みの一例として、筆者らの一人(ダベンポート)が消費財企業で分析的意思決定を教えるために開発したシミュレーションプログラムを参照されたい。

 教育で主眼とすべきは、データ、アナリティクス、AIへの取り組み姿勢と知識だけではない。経営上層部を含むすべての階層で、データを発掘して取り扱うスキルも重視する必要がある。

 データ分析会社スプランクの後援による上級幹部1300人への調査では、「データに関するスキルは自社でシニアリーダーになるための要件である」とした人は81%を占める一方、「データにみずからアクセスし活用することに自信がない」と答えた人は67%に上る。

「データのスキルは、ほかのビジネススキルよりも学ぶのが難しい」と感じている人は73%、「データのスキルを学ぶには自分は年を取りすぎている」と考える人は53%もいる。効果的な教育施策によって、こうした考えが間違っていることを証明できるのだ。

 例を挙げよう。TDバンクグループは、「アナリティクス専門ではない幹部のためのデータ・アナリティクス・アカデミー」という、丸1日かけて行う教育プログラムを立ち上げた。このアカデミーは独自に作成したケーススタディ、シミュレーション、一連のエクササイズによる実体験的なアプローチを取り入れている。

 プログラムの参加者は、まずビジネス課題のフレーミングに取り組む。たとえば、金融商品ポートフォリオの運用による資産の最大化が実現していない顧客を特定するなどだ。そして、その対処に役立てるためのデータソースを社内外から見つけ、分析的なソリューションを実行可能にする。これまでに300人以上の幹部がコースを受講してきた。

 同社には、データ、アナリティクスおよび関連技術の需要喚起と知識向上を図るためのさらに広範なプログラム群があり、同アカデミーはその一部にすぎない(プログラムの一例についての詳細はこちらの記事を参照)。

 これらの変革施策はTDで効果を上げている。同社は先頃、5つの戦略的優先事項の一つに「データドリブンになる」を掲げた。