(4)イコライザーとして機能する

 ビデオ通話の優れている点は、参加者の画面がすべて同じサイズであることだ。それは素晴らしいイコライザー(平等化をもたらすもの)である。

 危機の前は、チームの一部が対面で一部がオンラインという会議では、オンライン参加者は主に傍観者だった。「部屋の中にいる」ことには、適切な場所にいて、適切な人に適切なことを伝えることができるといった利点があった。

 企業がダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DE&I)の改善に取り組む中で、テクノロジーはたいていの集団が望む平等な場を提供してくれる。

 ズームの会話で皆が見ている中では、オフィスでの政治的駆け引きや自己顕示に加わったり、上司に対してうまく立ち回ったりすることを困難にする。それだけでなく、会議のデータを捉え、記録し、分析することができるので、組織はリアルタイムでDE&Iを評価するための確固たる事実を得られるようになる。

 会議中に異なるグループの人たちがどれだけ発言しているか。組織のパワーダイナミクスを支配する非公式なソーシャルネットワークに彼らが含まれているか、あるいは排除されているのか。彼らのアイデアや意見がそのグループに受け入れられているか。こうしたダイバーシティに関する分析は、それがまだ実現していない分野での進歩を必ず加速させる。

 テクノロジーと世界的な保健衛生の危機が、人材中心の組織における実力主義的な理想を破壊する、有害な駆け引きや縁故主義を多分に排除したことは明るい兆しだ。誰にも見られず、どこにいるか気にも留められていない時に「働く振りをする」ことは、はるかに困難になっている。

(5)人材が地理的に解放される

 ウイルスは国境の中に閉じ込められているわけではなく、人材もまたバーチャルな世界に閉じ込められているわけではない。

 人材採用の最初の段階でよく出る質問は「引っ越しますか?」というもので、長らく変わっていない。世界中の採用計画において、これは最もキャリアを制限する質問であり、長年にわたりキャリアアップや企業の成長を制限してきた。

 しかしここ数年、どこで暮らし、どこで働くかをみずからコントロールする、スキルの高い人材のエンパワーメントが見られるようになっている。ソフトウェア開発者は最も早くからこのシフトを経験し、人が仕事を追いかけるのではなく、仕事が人の後を追いかけていた。昨年は世界の多くの地域で失業率が記録的な低水準となり、場所に対する開放性が銀行や消費財など他のセクターにも拡大した。

 テクノロジーはいま、人材を場所から解放している。あらゆる分野で必要とされるスキルを持つ優秀な人材は、みずから選んだ場所に住み、自分にふさわしい場所で働くことができる。また雇用主は、インターネットに接続できる環境さえあれば、世界中どこからでも「ベストな」人材を調達できることを認識している。

 労働者は仕事を得るために物理的に移動しなければならないという概念は、引っ越し費用とともに消えてなくなった。これは非常に単純なことで、才能ある労働者は自由を求めているのだ。地理的な境界線からの自由、物理的な所在を期待されることからの自由、政府の規制からの自由である。

『エコノミスト』誌の試算によると、国境を開いて人材を解放すると、世界のGDPが78兆ドル増加するという。「労働力は世界で最も価値があるものだが、厳しい移民規制のために、そのほとんどが活かされていない」と同誌は指摘する。

 テクノロジーと文化的な組織の変化により、人が好きな場所で仕事ができるようになれば、既存の移民法や規制があっても、人材は自由になるだろう。それは国家主義的な政策を優先してグローバリゼーションを減速させる、昨今の政治的な傾向に対抗するものだ。

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 いまや働く場所と労働力は切り離され、仕事と家庭、学校が一緒の場になっている。テクノロジーは米国全土で日々、人々をオフィスから家庭へと移動させている。私たちはより公平な条件で生活を支える仕事と、あらゆる場所にいる人材とともに、オフィスの建物の外に文化を構築しようとしているのだ。

 未来に目を向ければ、この危機が終わった後も雇用者と従業員の双方のために機能し続ける、幸福と平等、生産性に焦点を当てた、新しい働き方を生み出す時が来ている。住む場所にかかわらず、成長を促す真にグローバルな人材プールを、いまこそ活用すべきだ。

 グローバルな人材プールは完成した。企業がそれを活用するための文化、自信、テクノロジーを持っていれば、人材はグローバルに活躍することができる。


HBR.org原文:The Post-Pandemic Rules of Talent Management, October 13, 2020.


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