(1)テクノロジーが人々のつながりを深めている

 AIなどの新しいテクノロジーに関する議論は、その状況を暗く、非人間的に描きがちだ。たとえば、『サピエンス全史』の著書ユヴァル・ノア・ハラリ「無用者階級(useless class)」の増加を警告している。そして自動化をめぐっては、非常に誇張された警鐘が鳴らされている。

 しかし、これまでのところより明白なのは、AIと「ともに」仕事をし、AIによって強化された人間は、AIを伴わない人間、あるいは人間を伴わないAIよりも、ほぼ確実に優れた結果を生むということだ。

 現在の危機は、仕事を「場所」から切り離すテクノロジーの利用を加速させた。このシフトはすでに起きており、規模にかかわらず大半の企業がズームやチームズなどオンラインのコラボレーションツールに投資しており、コラボレーションソフトの市場規模は世界で450億ドル以上に拡大している(ズームの株価はパンデミックが始まって以来、300%上昇した)。

 テクノロジーは急速に人間的なものになっている。私たちは単にテクノロジーとコラボレーションするだけでなく、それを通じてビジネスを運営し、家族と会い、結婚式に出席し、子どもたちを教育し、バーチャルな世界をより人間的なものにして、人間同士の真のつながりに基づく強固なデジタル上のつながりを築いているのだ。

 危機は、コラボレーションソフトウェアを「コンビネーション(共存)ソフトウェア」に変えた。マイクロソフトによれば、この数カ月間でソーシャルミーティング(「パジャマの日」や「ペットに会う日」など)が10%増加したという。私たちはみずから選択した場所で、「同じ時間に同じ空間に」一緒にいることができるようになったのだ。

(2)オフィスの外に文化を構築する

 昨年、世界がいまの状況を想像することすらできなかった頃、筆者らが「労働者は何を求めているのか(What Workers Want)」という調査結果を発表すると、あるフォーチュン500の企業のCEOがこんな質問をしてきた。「肩を寄せて座らずに、どうやって文化を築くことができるのか」

 文化は「建物の中」ではなく人々の中に存在するものであり、どこに座っていようと人を通じて文化を構築しなければならないというのが、筆者らの答えだった。そのCEOが懐疑的だったことはわかったが、国中のリビングルームやホームオフィスから文化を構築できること、そして構築しなければならないことをパンデミックが証明した。

 労働者は以前から、そのことを知っていた。だからこそ、転職した時にまったく同じテクノロジーを使い、それまでとは大幅に異なるやり方でも仕事ができる。

 基本的に文化とは「ここでのやり方」であり、既定の行動、好み、価値観、意思決定が合わさったものだ。オフィスに頻繁に行くかどうかに関係なく、それぞれの組織をユニークな環境にする。

 企業のリーダーたちもいま、このことを認識している。リーダーはマイクロマネジメントを避け、現在主義を乗り越え、従業員一人ひとりが「実際に」何を生み出し、組織に貢献しているかを、できるだけ客観的かつ多くのデータを用いて評価することにより、あらゆる場所での文化の構築に重点的に取り組めるようになる。

 そして何よりも、社員との信頼関係や公正な関係を育むことで、リーダーはバーチャルだけの世界でも企業文化をアップグレードさせることができる。

(3)仕事が暮らしを支える

 マンパワーグループの調査によると、労働者が危機後に関して懸念することは、健康に次いで、柔軟性の維持である。大半の労働者は週に数日のリモートワークを希望しており、仕事と家庭のよりよいバランスが取れるようなハイブリッド型の職場を希望している。

 しかし、オフィスが人と人とがつながる役割を果たしていることに変わりはない。フォードなどの企業は今回の危機を機に、オフィススペースのあり方を見直している。コラボレーションや社交の場として、人々が集う新しい拠点に投資する企業もある。

 Z世代の従業員は(自分の望む条件で)オフィスに戻ることに最も積極的だ。彼らは特にネットワーク形成し、学習する場としてだけでなく、社交の場として職場を重視している。今日多くの企業をリードしているX世代とベビーブーマー世代は、仕事と家庭をもっと切り分けようとしており、物理的な職場がもたらす境界を享受している。

 リーダーにとって重要なことは、従業員がいまでも「時々」オフィスに出社したいと思っていても、毎日出社したい人はほぼいないと理解することだ。対面が必須の仕事では、通勤時間を最小限に抑えるために柔軟な施策を採用したり、子どもに勉強を教える時間をつくれるようにシフトを融通したり、暮らしを支える働き方ができるようにスケジュールを柔軟にしたりすることが大切だ。