Illustration by Judith Rudd

質のよい睡眠を十分取ることは、心身の健康だけでなく、仕事にも好ましい影響を及ぼすことが明らかになっている。だが、従業員にベストの状態でいてほしいと思っても、自宅に押しかけて睡眠を管理するわけにはいかない。そこで筆者は、従業員の睡眠行動を変えるために、ブルーライトを遮断する眼鏡への投資を推奨する。本稿ではマネジャーと顧客サービス担当者を対象とした実験の結果から、ブルーライトカットの眼鏡の着用が睡眠の質と時間を向上させ、さらに広範にわたって仕事の成果の改善につながることを示す。


 従業員には、職場でベストの状態でいてほしい。そのために力を注ぐべきは睡眠を重視することであると、筆者の研究から明らかになっている。

 十分な睡眠を取ることは、仕事に対するエンゲージメント倫理的行動、よいアイデアへの気づき、そしてリーダーシップなど、広い範囲で仕事の成果を向上させる効果がある。従業員にベストの状態でいてもらうには、質のよい睡眠を十分に取ってもらうのがよい。

 だが、どのようにすれば従業員の行動を変えられるだろうか。

 従業員は家で寝る。あなたがそこにいて、もっと睡眠を取るよう強いることはできない。彼らには、家庭での責任、健康状態、あるいは他の仕事など、あなたにはコントロールできない問題があるかもしれない。

 あなたにできることとしては、睡眠の取りやすい仕事のスケジュールを組む、あるいは業務量が過剰にならないようにするなど、従業員が十分な睡眠を取りやすい環境をつくることが考えられる。だが、それでは部分的な解決にしかならない。人件費抑制のプレッシャーがあれば、実際に対策を打つのは難しいかもしれない。

 睡眠の問題を抱えた従業員を、適切な治療につなげる努力もできる。それはたしかに効果的だが、従業員の健康管理にさらなる経済的資源をつぎ込むことになる。

 すると、次の問いが残る。睡眠を改善して従業員の有効性を高めるための、低コストで手軽に実施できる解決策はありうるのだろうか(ネタバレになるが、答えはイエスだ。従業員1人につき69ドルで済む例がある)。

 筆者は共同研究者とともに、この問いに焦点を絞って研究を行った。その土台となった先行研究は、ブルーライトを遮断する眼鏡を着用すると、よく眠れるようになることを証明したものである。理由を説明すると少し専門的になるが、かいつまんで言うと次のような仕組みだ。

 メラトニンは睡眠を促すホルモンで、夜、就寝前に分泌量が増える。だが、光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、眠りにつきにくくなる。

 とはいえ、すべての光に同じ効果があるのではなく、最も強い影響を及ぼすのはブルーライトである。そのため、ブルーライトを遮断すれば、光によるメラトニン分泌の抑制効果はほとんどなくなり、夜になるとメラトニンの分泌が増えて、スムーズに眠りにつくことができる。