●プライベートでの人間関係に投資する

 最初の一歩を踏み出すのは、どこよりもまず家庭がふさわしい。友人や家族とともに過ごす時間を持とう。ハーバード大学の有名な長期研究をはじめとする多くの研究で、人を幸せにするのは金や名誉よりも、プライベートでの親しい人間関係であることが明らかになっている。

 ●職場外のネットワークをつくる

 キャリアの終着点が近づいている人は、プライベートでの人間関係のために時間をつくる以外に、まだ何もしていないのなら職場外の活動を始めるとよい。たとえば、地域のボランティア活動からは、価値をもたらしているという感覚と、新しい人間関係が得られる。

 また、学び続ける機会を探そう。大学のプログラムに登録するのもよい。創造力の積極的な活用法を教えることに道を見出す人もいる。後進を指導して、次世代の活躍に貢献することは、大きな満足をもたらすだろう。

 ●新しい活躍の場を見つける

 引退するエグゼクティブの中には、企業や非営利団体のコンサルタントや理事として、パートタイムや臨時の職につく人も多い。新進の起業家や若いエグゼクティブのメンターになるのもよいだろう。

 メンターになれば、ビジネスの世界を渡り歩く若い人たちのために、質問に答えたり、大きな変化をもたらすような提言をしたりすることもできる。また、ネットワーキングは企業が成功するために不可欠なので、あなたの人脈を利用して、若い世代に有利なスタートを切らせることもできる。若い人たちの冒険に積極的に関わることができるかもしれない。

 これらをすべてやろうとすると、気後れし、腰が引けるのも無理はない。多くの人は、決断したり、行動を起こしたりすることに二の足を踏むものだ。

 人生の次のステップをどう踏み出すべきか。そんな行き詰まりを感じている従業員のために、経営者はリソースを提供することができる。個人カウンセリングやセラピー、人格的成長に寄与するワークショップは、自分を見つめ直し、人生の次の段階に向けた価値観や新しい振る舞いを身につけるための貴重なリソースだ。

 残念ながら、従業員が引退後の生活へとスムーズに移行できるよう、深く関わっている企業はまだ少ない。しかし、今後はそれも変わっていくだろう。とりわけ、専門性の高いサービスを提供する企業が、その手本を示している。

 筆者はかつて、大手の戦略コンサルティング会社と仕事をしたことがある。その会社は、シニアパートナーの定年を比較的若い年齢に設定している。人事部門は引退予定のパートナーのために、ワークショップやライフコーチとのカウンセリングを手配し、積極的に引退後の生活に備えさせる。

 これはウィン・ウィンの結果を生んでいる。引退するパートナーにとっては新しい生活様式に適応しやすくなり、会社にとっては元パートナーの広い人脈が恩恵をもたらす。引退したパートナーが親善大使となるからだ。同社に新しいビジネスを紹介したケースもある。

 かつて引退後の生活に向けた準備といえば、個人資産の運用がすべてであり、そこに心理面の準備など含まれていなかった。今日では平均寿命が延びたため、経済的安定の確保は引退プランの一要素にすぎない。知識経済において、健康で精神的な活力もあるマネジャーに「自分はもう何も貢献できない」と思わせることは、まったく理に適っていないのだ。


HBR.org原文:3 Tips for a Smooth Transition into Retirement, September 30, 2020.


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