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引退後の生活に希望を抱いている人もいるだろうが、あなたが思い描くような豊かな時間を過ごせるとは限らない。閉じた人間関係の中で物事が完結し、仕事のような大きな達成感も得られず、喪失感を味わう人は多い。本稿では、引退後の人生に絶望しないための3つのヒントを紹介する。


 サイモンは引退後の生活を心から楽しみにしていた。仕事についてまわるプレッシャーに、そろそろうんざりしていたのだ。多すぎる会議に、多すぎる出張。あれもこれも多すぎた。

 残念ながら、引退後の生活は、望んでいた通りには展開しなかった。スーパーで買い物をしても、限定的な達成感しか味わえない。毎日ひっきりなしに交わされるメールや電話、同僚との会話が懐かしい。自分がもはや物事の中心にいないことが寂しかった。要するに、喪失感を味わっていたのだ。

 筆者は仕事で、サイモンのような人とたくさん出会ってきた。キャリアを満喫してきた人は往々にして、自分の役目が終わったことをなかなか受け入れられない。

 引退を迎えるエグゼクティブは、これから人生の新しい段階に入るとわかっていても、自分の立場の変化に感情のレベルでどう対処すればよいか、引退するまでおそらく、ほとんど考えない。それに、仕事に追われて、じっくり考える時間もほとんどないままだろう。その結果、引退後の生活にひどく失望するのだ。

 離婚や死と同じように、引退には精神的につらい別離が伴う。この別離を乗り越えるには、グリーフ(悲嘆)に対処する必要がある。

 心理学者のジェームズ・ロバートソンとジョン・ボウルビィは、子どもの研究にもとづき、とても参考になる対処法を提示した。私たちは別離後に「抵抗」「絶望」「離脱」の3段階を踏んで新しい人生に順応していくというのだ。

 当然、この段階を順調に進む人もいれば、難航する人もいる。たとえば、まだ現役で仕事をしているパートナーと同居する男性はしばしば、引退を恥ずかしいこととしてとらえ、パートナーに寄生しているように感じることがある。そうした感情は絶望を招きやすく、少数ではあるが命を縮めることすらある。

 どうすれば、それほど苦痛を感じずに移行できるのだろうか。