Illustration by Asia Pietrzyk

フォロー・ザ・サイエンス――新型コロナウイルス感染症の問題は、何より科学的知識をもって解決せよとした2020年を象徴するフレーズだ。しかし、感染拡大が加速しても、政治的な検討を遅らせた結果、経済面をはじめさまざまな惨事を招く結果となった。ここから得られるのは、解決すべき課題の性質によって、必要となる思考様式が異なるという教訓だ。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは知識を3つの領域、すなわち「テクネー」「エピステーメー」「フロネシス」に分けている。リーダーが課題に対処するためには、まずその性質を見極め、これらのどの思考様式が適切かを判断しなくてはならない。


 あなたがみずからのリーダーとしての資質を強化したいと考えているとして、具体的にはどのような能力を育むべきなのか。この点では、2020年の新型コロナウイルス感染症による危機の経験が重要な教訓になる。

 コロナ禍を通じて見えてきたのは、リーダーにとって、目の前の課題に対処するためには、どのような思考様式なのかを見極める能力が欠かせないということだ。

 不適切な思考様式で課題に臨めば、客観的基準がない中で価値観に基づいた主観的な判断が求められている時に、ひたすら科学的データを分析し続けることに時間と労力を浪費してしまう。あるいは、データ分析を行えば自分の理解が見当違いだとすぐにわかるのに、いつまでも直感頼みのアプローチを取り続けかねない。

 この類いの失敗は、至るところで起きている。それは、どのような課題に取り組むかによって、必要な知識のタイプが異なるからだ。これは、我々独自の主張ではない。2000年以上前、古代ギリシャの哲学者アリストテレスがそのような主張をしている。

 アリストテレスは、問題解決に必要とされる知識を3種類に分類した。第1は「テクネー(技術知)」。これは実用的な技芸、つまり何かをつくり出すための道具や手法に関する知識のことだ。

 第2は「エピステーメー(学問知)」。これは自然界の法則など、揺るぎない客観的事実に関する科学的知識のことを指す。現時点でまだ十分に理解できていないとしても、「それ以外の可能性はありえない」と見なされる知識である。

 第3は「フロネシス(実践知)」。これは、倫理的判断と言ってもよいだろう。さまざまな価値観がぶつかり合う状況で意思決定を下すためには、多様な視点と知恵を持たなくてはならない。正解が1つでなかったり、いくつも選択肢があったり、ほかの可能性もあったりする場合に、この種の知識が物を言う。

 農家が灌漑システムをつくろうとしたり、エンジニアがプロセスの迅速化を目的にソフトウェアを開発しようとしたりする時、必要とされるのはテクネーの領域に属する知識だ。

 天文学者が宇宙を研究し、銀河がいまのように回転している理由を解き明かそうとする時には、エピステーメーの領域の知識が求められる。一方、政策決定者が限りある予算の配分を決めようとする時は、フロネシスの領域に属する知識を動員しなくてはならない。