従業員のことをよく知る

 エレーン・デイビスが最高人材責任者を務めるコンティニューム・グローバル・ソリューションズでは、従業員のほとんど(約1万7000人)がコールセンターで働く時間給労働者だ。

 3月半ば、デイビスはその全員を在宅勤務にした。これは簡単な決断ではなかった。しかしデイビスは、従業員の大多数が女性で、その多くはシングルマザーであり、コロナ禍でいままで以上に多くの役割をこなさなくてはならないことを知っていた。

 そんな従業員たちが最も必要としているものは何か。それは給料だと、デイビスは言う。どんな組織でも、適切な報酬を支払うことは最優先事項であることは明白だ。しかし、多くの時間給労働者にとって、給料を得ることは、医療へのアクセス、電気をつけておけること、きちんと食事を取ること、さらには立ち退きを逃れることを意味する場合もある。そのすべてがコロナ禍で一段と不安定になっている。

 ウェルネス・プラットフォーム(現在は個人向け融資も手がける)のブランチが3000人以上の時間給労働者に行った調査によると、緊急時のための貯蓄が500ドル以下の人は約80%、コロナ禍で貯蓄がゼロになった人は52%に上る(昨年より12%上昇)。すでに光熱費や家賃の支払いが遅れている人は76%に上った。

 こうした現実を受け、デイビスはブランチCEOのアティフ・シディキの協力を得ることにした。ブランチは、コンティニュームのように事業主からの規模を受けて、その従業員に給料の一部(50%)を前払いするサービスを提供している。これはコロナ禍で大きな打撃をこうむった従業員が、日々を持ちこたえる助けになっている。

身体的安全性が
心理的安全性をもたらす

 筆者は、これまでにも『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に燃え尽き症候群に関する論文を書いてきたが、その中でよくパーマネンテ・フェデレーションの共同CEOであるエドワード・エリソンの言葉を引用してきた。エリソンは医師でもあり、医師の燃え尽き症候群について『アナルズ・オブ・インターナル・メディシン』に論文を発表してきたほか、医療関係者の燃え尽き防止に長年尽力してきた。

 今回話をした時、エリソンはカリフォルニで激しい森林火災が起きている地域にいた。エリソンはかつて、森林火災に見舞われた地域におけるバーチャルケアや在宅ケアの拡大といった、医療対応策を策定したことがあった。

 コロナ禍のいまは、そのどちらのケアも並行して提供する必要がある。その間、スタッフの安全にも常に気を配りながら、だ。「コロナ禍の初期に、うちのスタッフが最初に聞いたことは、『私と、私の家族の安全を守ってもらえますか』だった。私には、スタッフ自身が自分で自分のケアをすることも大切だと念を押す必要があった」

 エリソンは当初、この「恐ろしい経験」で従業員がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患うことが心配だったが、いくつか非常に重要なことを学んだという。「まず、自分たちは機敏に動けることに気づいた。実際、私たちはとても迅速に対応した。第2に、患者、医師、そしてスタッフが遠隔医療に非常にスムーズに移行できた。第3に、相互依存と無私の精神が強く存在した。日々、助け合いの精神で仕事に臨み、それは我々の状態をとても良好に保つ助けとなった」

 それでも、基本は人間関係だ。職場(対面であれバーチャルであれ)の友人関係は、現在のように極端にストレスフルなイベントを乗り越えられるか、燃え尽きてしまうかを決める場合がある。

「コロナ禍では、誰もが孤独を感じやすい。フィジカル・ディスタンシング(物理的距離)が求められるので、なおさらだ」と、エリソンは言う。「医療従事者の場合、仲間との絆が何よりも重要になる。それはチームとの同志的な感覚であったり、孤独や悲しみにさいなまれた時にお互いを頼りにできる感覚だったりする。プライベートで何かあった時も、本当に気にかけていた患者が亡くなってしまった時も助けになる」

 さまざまな悲惨な状況が想定されるが、こうした問題はどれも従業員の心理的安全性を阻害する現実の脅威となりうるので、リーダーは部下たちのさまざまなニーズに気を配る必要がある。今回のコロナ禍の教訓をもう一つ挙げるとすれば、それは、燃え尽き症候群は常に存在したが、本当にストレスがかかると爆発するということだ。

 エリソンの経験、および本稿で紹介した人々の話で重要なのは、それぞれがユニークであることだ。家族の燃え尽きを防ぐことから、従業員が出社に抱く恐怖に対処し、働きすぎを防ぎ、命を守ることまで、彼らの経験は燃え尽きを防止するための万能薬は存在しないことを改めて物語っている。

 レジリエントなリーダーは、迅速に方向転換し、常に敏捷に動くことができる。共感型リーダーは、従業員のニーズに応え、その時々に合わせて対応を調整する。そして人間中心型リーダーは、グローバルなパンデミックの中にあっても、一段と成長するために戦うチャンスを見出す。

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 燃え尽き症候群について考え直す必要があり、あなたもその手助けをすることができる。筆者らは、あなたの声を聞きたい。あなたがパンデミックを乗り切ろうと奮闘するリーダーであれ、燃え尽きの経験者であれ、あなたのストーリーは重要だ。10分間アンケートに答えて、あなたの経験を教えてほしい。回答は匿名だ。筆者の新著で引用を希望する場合は、アンケートの最後のフォームに連絡先を書き込んでほしい。


HBR.org原文:Preventing Burnout Is About Empathetic Leadership, September 28, 2020.


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