従業員の声を聞いて方向転換する

 クラウドID管理サービスを提供するオクタのトッド・マッキノンCEOは、部下たちが十分な休憩をとっていないことに気がついた。「データによると、うちのスタッフは自宅で1週間毎日、24時間働いているようなものだった」。金曜日を休みにすれば助けになると思ったが、仕事量は変わらなかったので、スタッフたちは土曜日に仕事をすることになってしまった。

 そこでマッキノンは、成果物を変えることにした。「チームから本当に重圧を取り除きたいなら、仕事量を調整しなければならない」

 その効果はまだわからないが、マッキノンのアイデアそれ自体は正しい。まず、データに基づきストレスの根本原因が何かを迅速に評価する。次に、その根本原因を解決する戦略を取る。さらに、従業員がいま抱えている不安について忍耐強くサポートすることが、燃え尽きを防ぐうえで極めて重要になる。

 ニューヨークの商業不動産仲介会社スクエアフットで人材担当バイスプレジデントを務めるユージニー・ファニングは、コロナ禍では、従業員をこれまで以上に信頼することが、燃え尽きを緩和する助けになっているという。

 ファニングのチームは、スタッフの出社再開に対する不安を理解して、一般的な安全ルールを大きく上回る措置を取った。従業員が出社再開時期と、出社日数を自分で選ぶことができるようにした。オフィスは「在宅勤務を休みたい」スタッフが来る場所になった。

 米国の労働人口のほぼ3分の1は未成年の子どもを抱えており、いま、その多くが苦しんでいる。米国心理学会の報告書「コロナ禍におけるストレス」によると、子どもがいる労働者の半数近く(46%)が、高いストレスレベル(最高10点中8~10点。1点は「ほとんど、あるいはまったくストレスがない」、10点は「非常にストレスが大きい」を指す)を示した。

 ニューヨークのITソリューション企業エレクトリックで人材担当バイスプレジデントを務めるジェイミー・コークリーも、同様の見方を示した。彼女は、子育て中の従業員が受けている絶大な影響を緩和するために努力していた。

 コークリーは、パンデミックにどう対処しているかについて、親同士が話をできるフォーラムを立ち上げた。その場で2人のシニアバイスプレジデントが交わした「どうやって対処してる?」「対処なんてできてない。親としても失格だし、従業員としても失格という気分だ」というやり取りを聞き、働く親がいかに大変かを理解できたとコークリーは言う。

 エレクトリックではすでにフレックスタイム制を導入し、育児支援金の支給を決め、自宅以外の場所で仕事をする必要があるスタッフのためにオフィスを開放していた。だが、「次なるサポートを検討している。フレックスタイム制だけでは不十分だ。それでは2つのこと(子育てと仕事)を同時にやらなければならないという課題の解決にはならない。もっとよいプログラムをつくり、子育て中の従業員をサポートしたい」。

 ジェイミーとユージニーの対応は、どちらも共感に根差している。2人の対応がそれを物語る。「どうすれば安全を感じてもらえるか。ほかにどのような支援ができるか。私は学び続けることを恐れていない。もっとできる」という姿勢だ。

 UKGのエグゼクティブディレクターであるクリス・マレンも同意する。「企業は、たとえ景気が悪くても、コロナ禍を通じてより強くなり、ここから立ち上がる大きなチャンスを目の前にしている。雇用主と従業員の関係の基礎を成すべき根本的なニーズ、すなわち身体的安全性、心理的安全性、雇用の安定、そして柔軟性に立ち返ることで、新たな信頼と共感を育むことができる」