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コロナ禍で慢性的なストレスにさらされ、余裕を失ってはいないだろうか。その状態が続くと、些細な出来事がきっかけで急激に追い詰められ、崖から転げ落ちるように燃え尽き症候群に陥る可能性がある。リーダーは部下がそうなるのを防ぐために「共感」を示すことが有効だ。ただし、共感の定義を見直す必要がある。自分がやってほしいことをするのではなく、従業員の声にしっかりと耳を傾け、彼らが本当に必要とするサポートを忍耐強く提供することが重要だ。


 いま「マージン」がない状態、すなわち日々の最もシンプルなストレスにさえ対処する余裕がない人は、どのくらいいるだろうか。

 筆者もその罠にはまったことがあるので、よくわかる。精神的に無理が続き、長期にわたり慢性的なストレスにさらされると、そうなりうる。失敗できる余地は基本的にゼロだ。しかし自分では、そんな極限の状態にあることに気がつかない。気づいた時には、壁にぶつかっている。

 筆者は現在、燃え尽き症候群に関する書籍を執筆しており、その一環として、ストックホルムにあるカロリンスカ医科大学のマリー・オースベリ教授の話を聞いた。オースベリは博士号を持つ精神分析医で、極度の疲労に伴う障害の専門家である。

 オースベリは「壁にぶつかる」とは、「追加の負担を課された従業員が、精神的に壊れる」瞬間だと語る。さらに、そうなるまでの18ヵ月のプロセスを説明してくれた。最初は、感情の満ち引きを経験するようになり、ある時に突然、崖から転げ落ちる。最後の一撃は他愛ないことかもしれないが、それがひと押しになる。そして、余裕が完全に失われるのだ。

 UKG(アルティメイト・クロノス・グループ)のワークフォース・インスティテュートと、ワークプレース・インテリジェンスが中心となって行った11カ国3900人の労働者とビジネスリーダーの調査によると、燃え尽き症候群と疲労は、リモートワーク中のビジネスパーソン(43%)と肉体労働者(43%)のどちらにも、同じくらい懸念される問題であることがわかった。

 全体として、従業員とビジネスリーダーの5人中3人(59%)が自分たちの組織は燃え尽き症候群を防止するため何らかの措置を取っていると答えた。しかし、従業員の3人中1人(29%)は、会社がより共感を持って行動してほしいと考えている。

 ここでキーワードとなるのは「共感」だ。筆者はリーダーたちと話をする時、共感型リーダーシップの定義を見直すよう促している。それは、燃え尽き症候群の防止につながるからだ。

 一般に、「自分がやってもらいたいと思うことを他人にもする」ことが共感の黄金律と考えられているが、これでは不十分だと筆者は考えている。真剣に共感を示したいなら、「相手が自分自身のためにすると思われることをしてあげる」べきだ。そのためには、自分のニーズを忘れて、バイアスや特権を排除し、部下の声に積極的に耳を傾け、行動を起こす必要がある。

 研究の過程では、分断に橋をかけようと懸命に努力するリーダーが大勢いるという、希望的な発見もあった。筆者は書籍執筆のためのインタビューを通じて、燃え尽き症候群がいっきに悪化するのを防ぐために心からの共感を示す「黄金律2.0」を探り始めた。

 筆者が話を聞いたリーダーたちは、コロナ禍の破壊的な影響の一歩先を行こうと、猛烈なスピードで自社のポリシーやプラクティスを方向転換していた(いまもそうだ)。当初は助けになるかもしれないと思った措置が、実際は悪影響をもたらす可能性があることが明らかになるにつれ、リーダーは皆、素早く学習し、古い考え方を捨てて、新しいアプローチを試みていた。

 たとえば、従業員を何時間もビデオ会議に参加させておきながら、夕方のハッピーアワーや朝のヨガにも参加することを期待するのは、彼らのウェルビーイングを確保するという本来の目的を台無しにして、こうした活動を仕事の一部だと感じさせていることに気づいた。