強大なテクノロジー企業の力に挑もうという機運の高まりは、歴史的に見て画期的なものと言ってよいだろう。しかし、これまでの長い歴史を振り返ると、反トラスト法により巨大テクノロジー企業を追い詰めようとする試みは、あまり効果を上げてこなかった。特に、巨大企業をただちに分割することを目指す場合、そのような成果は達成できていない。

 1956年、通信企業グループのベル・システムの市場独占は、7年間に及ぶ法的な闘争の末、結局は手つかずのままで終わった。IBMに対する反トラスト法訴訟は、13年にわたって続いた。しかし、知っての通り、巨人IBMはいまも解体されていない。

 司法省は1998年に反トラスト法違反の疑いでマイクロソフトを提訴した時、同社が市場で圧倒的なシェアを誇るオペレーティングシステム(OS)にいくつものアプリケーションプログラムを抱き合わせにして販売していることが独占行為に当たると主張した。しかし、3年後、この訴訟は和解という形で決着し、マイクロソフトは無傷で裁判を切り抜けた。

 今日のテクノロジー業界は、ベル・システム、IBM、マイクロソフトへの反トラスト法訴訟が提起された時代に比べて、いっそう複雑性を増している。

 しかも、2016年の米国大統領選以降、ソーシャルメディアを通じた世論操作が露見し、プライバシー侵害の問題も浮上して、巨大テクノロジー企業に対する人々の感情は悪化していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、そのような感情はやわらいでいる。コロナ禍の中で、人々はこれまでになく、テクノロジー製品への依存を強めているからだ。

 裁判で巨大テクノロジー企業の反トラスト法違反を問おうとすれば、(最終的にどのような結末になるにせよ)訴訟はどうしても長期化せざるをえない。その理由はいくつかある。

 第1に、テクノロジー企業に対する批判は、競争を阻害するような行動、プライバシーの侵害、データの安全性、偽情報の拡散など、きわめて多岐にわたる。第2に、批判を浴びている巨大企業は何社もあり、それぞれの企業ごとに指摘されている問題点も異なるし、提案されている問題解決策も異なる。第3に、司法省、連邦取引委員会(FTC)、民主党主導の下院、共和党主導の上院など、いくつもの政府機関や部門が行動を起こそうとしており、それぞれが異なるアプローチと動機とスケジュールで動いている。

 第4に、テクノロジーは絶えず変わり続ける。第5に、これまでテクノロジー企業に対する反トラスト訴訟はしばしば、和解もしくは同意判決で決着してきた。この場合、企業側はなんらかの譲歩をするのと引き換えに、会社分割は回避できる。そのため、企業側は裁判を極力長引かせようとする可能性がある。

 以上の点を考え合わせると、裁判が長期化し、その間に機運がしぼんでしまうかもしれない。しかも最終的には、和解により、細部の変更だけで終わってしまう可能性もある。

 では、現在の機運を活かすためには、どうすればよいのか。

 まず、どのようなテクノロジー関連の問題を解決したいのかをはっきりさせたほうがよい。いま、さまざまな問題が俎上に上っている。競争の欠如はそうした問題の一つだ。

 検索エンジン、ソーシャルメディア、オンラインショッピングに関して、消費者の選択肢は限られている。

 プラットフォーム企業が特定のアプリケーションやサービスも保有していて、それらのアプリケーションやサービスのビジネスで不公正に有利な立場に立っているケースもある。たとえば、アマゾンは、サードパーティーの業者が商品を販売できるマーケットプレイスを運営すると同時に、自社ブランドの商品を同じ場で販売し、そうしたサードパーティーの企業と競合関係にもある。

 また、プライバシーの問題もよく指摘されている。米国にはいまだに、データ保護のための一貫した法律が存在しない。加えて、ソーシャルメディアのユーザーは、偽情報にさらされることが多い。

 これらの問題は、市場における競争を維持し、民主主義の制度を守り、人々のプライバシーを保護するうえで、きわめて重要な意味を持つ。しかし、それよりも根本的な問題がある。その問題はあまり注目されていないが、いますぐに解決しなくてはならないものだ。