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人から尊重され、尊敬される存在でありたいと思うことは自然だ。ただし、自分を偽ってまでそうありたいと思っているわけではない。威厳のある存在になるためには、自分を必要以上に大きく見せなければならないと考える人もいるが、そうではない。本稿では、自分自身に正直でありながら、それを実践する5つの方法を紹介する。


「レベッカ、私はもっと威厳がほしい」。アンドレアスは、筆者との初めてのコーチングセッションの冒頭で、そう言った。「でも、自分を偽りたくはない。自分ではない誰かのふりをするのはいやだ」

 筆者は20年間、ロンドンスクール・オブ・エコノミクスの組織心理学者として、経営人材育成プログラムを通じてリーダーシップ開発を教え、世界中のプロフェッショナルにコーチングを行ってきた。そのおかげで、何百人ものプロフェッショナルの成長目標を聞くという栄誉にあずかっている。

 そこでは、尊重され、尊敬される存在になりたい、と答える人が多い。そして、そのためには自分の性格や価値観を偽らざるをえない、という不安を感じている人もいる。

 職場で「威厳がある」ということは、自分の意見が真剣に受け止められ、自分の貢献が重要だと認められ、人として信頼され尊重されているということだ。それによって説得力や影響力が増し、組織の中で出世できる可能性が高くなる。これは組織の側にもメリットがある。意見が真剣に受け止められれば、組織に価値をもたらす可能性が高いからだ。

 威厳は特定の行動と結びつけられやすい。私はそれを「表層的な威厳」と呼んでいる。一般的には、相手を自分の虜にするか威圧することが狙いで、ポーズを取ったり、優位に立とうとしたり、尊大に見せたりすることだ。こうした振る舞いが行き過ぎると逆効果となり、人間関係や影響力をむしばみ、さらにはイノベーションを阻害する「恐怖心を利用した組織文化」を助長する恐れさえある。

 また、どれほど誠意があっても、見た目を整えるだけで威厳を身につけたつもりでいると、痛い目に遭う可能性がある。ある研究ではオーセンティシティ、すなわち深いレベルでの意識的な思考、感情、信念、価値観など本来の自分を理解して、それ示すような行動をとることが、ウェルビーイングの最も強力な予測因子の一つになる可能性を示している。

 多くの人はこのことを直感的に理解し、威厳を身につけようとすること自体を尻込みする。威厳とは、持って生まれたのでなければ手に入らないものだと考えているからだ。

 しかし、筆者の仕事を通じた経験と研究によれば、自分自身に正直でありながら、威厳を身につけることはできる。重要なのは、人と深く有意義な信頼関係を築くことで、本来の自分を変えられると理解することだ。筆者がこの結論に至ったのは、幅広い業界や地域のあらゆる組織レベルにおける100人超のプロフェッショナルを対象とした調査、およびプロフェッショナルのコーチングの結果である。

 コンサルティング会社で金融アナリストとして働く、ミタンを例にとろう。ミタンはマネジャーに「もっと威厳が必要」であり、具体的には「その場にいる誰よりも目立ち、より素早く効果的にクライアントとつながる」ことが必要だと言われた。

 ミタンは、自分の上司にはカリスマ性があるが、自分にはそれがないと思っていたため、気分を害して失望した。「注目の的になりたいと思ったことは一度もない」と筆者に語ったが、ミタンはコーチングを通じて、自分に最も適したやり方を見つけた。その出発点は、クライアントとつながることは自分の仕事の一部である、と自覚したことだった。

 そこでミタンは、上司や同僚から得たより詳細なフィードバックに基づき、新たに具体的な目標を設定した。それまでは自分が安心できる得意分野の話だけをすることが多かったが、これからは相手の事業に関して、自分がそれほど知識のない領域のこともクライアントに尋ねる、という目標である。

 ミタンは覚悟して取り組んだが、自信はなかった。にもかかわらず驚いたことに、クライアントはこの新しいアプローチにすぐに反応し、自分たちの課題をもっとオープンに話してくれるようになった。そのおかげで新たなソリューションを提案できるようになり、それまで以上に感謝され、自信へとつながった。

 以下では、ミタンや他の多くの事例から得た、自分らしい威厳を身につけるための5つの方法を紹介する。