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ビジネスを飛躍させるうえで、テクノロジーが重要な役割を果たしていることに、議論の余地はないだろう。実際、多くの企業が自社のビジネスに人工知能(AI)を活用している。ただし、そのほとんどが人員削減に重きを置いており、デジタルトランスフォーメーションの本来の目的を果たせているとはいえない。自動化による失業という悪循環を防ぎ、人と機械が真に共存する組織を構築するために、何をすべきなのか。


 今日のビジネスがデータとスマートなアルゴリズムに主導されている事実に、異を唱えるリーダーなどいないだろう。

 しかし、その多くは真のデジタルトランスフォーメーションを推進するのではなく、デジタルインクリメンタリズム(増分主義)を追求している。コスト削減のために、あるいはさらに悪いことに、人員削減のために自動化を活用しているのだ。

 そうすることで気の短い株主からは時間を稼げるかもしれないが、難問に正面から取り組めなければ長続きはしない。難問とはすなわち、人工知能(AI)が主導する競争の新時代に仕事をどう捉え直すか、である。

 新型コロナウイルスがもたらした景気後退による高失業率で、システム全体が抱える問題が見えづらくなっているが、自動化が働き手に与える影響は加速している。これは過去にも起きている。ここ数回の景気後退期には必ず、従業員に取って代わる自動化が進展した。

 危機に直面した時、従業員の給料を下げることも可能だが、収益が下がって業績の悪化した企業はたいてい、人を雇うよりも新しいテクノロジーに投資することを選ぶ。

 2020年の雇用危機は「強制的な自動化(automation forcing)」によってさらに悪化すると、経済学者のデイビッド・オーターは見ている。彼の見解によると、ソーシャルディスタンスを保つ必要性と外出禁止令が一時的に労働力不足を招き、企業は少ない人材で業務をこなすために、やむをえず新しいテクノロジーを利用することになる可能性が高い。

 たとえば、「各店舗で働く従業員の数が減る、警備員の数が減って防犯カメラが増える、倉庫で自動化が進む、毎晩の職場の掃除に多くの機械が使われるようになる」などが考えられるという。

 これは確かに暗澹としたシナリオだが、不可避なわけではない。自動化による失業というディストピア的なサイクルから脱出する一つの方法として、より多くの組織がテクノロジーに働き手の代わりをさせるのではなく、テクノロジーを利用して仕事をとらえ直すことがある。

 そのためには、AIを使うことでいかに革新的なビジネスアイデアや顧客体験を生み出せるか、いかに新しい働き方を編み出せるか、いかに効果的なイノベーションと問題解決のできるチームを増やせるかを考える必要がある。