しかし、方針を維持することは、行動を起こさないということではない。我々が観察したベンチャー企業のポートフォリオにはいくつかの共通点があり、方針の維持を選択した企業は、いくつかのルールに従っていた。

 それらは「スピードを落とす」「理念を再確認する」「周辺部分のコストを削減する」「データを観察する」「実験して弱点を見つける」、そして「ピボットする必要がある時は、勢いよく行う」というものだ。

 ●即座にスピードを落とす

 起業家は猛スピードで走ろうとしがちだが、これらの企業も例外ではなかった。しかし、市場のメルトダウンが始まると、ブレーキをかけるのではなく、顧客の声に耳を傾け、市場を追跡し、リソースを節約し、「必要に応じて」方向転換する能力を高めるためにダウンシフトを行った。

 動物の世界にも似た例がある。世界最速の陸上動物であるチーターは、獲物を追いかける時はスピードを「半減」させ、時速110キロ超の最高速度に近づけることはほとんどない。そうすることでチーターは体力を温存し、獲物が突然逃げる方向を変えても、誤った方向に行き過ぎないようにすることで選択の余地を残すことができると科学者らは考えている。

 方針を維持した企業も、これと似たロジックに従っていた。トラベルパークの共同創業者でCEOのアヴィ・メイアはこう話す。「私たちが意思決定のスピードを落としたのは、情報が少ない戦時下のような状況であり、最悪の場合は暴走する恐れがあったからだ」

 メイアは、自身とチームがトラベルパークの長期的なビジョンに素早く集中し、そのビジョンを損なう恐れのある軽はずみな決定を避けたいと考えていた。

 ●時間をかけて基本的なテーゼを再確認する

 起業家たちはスピードを落とすことで、将来のマーケットプレイスに対するみずからのテーゼ(方針)が正当であることを再確認することができた。

 ゲスティの共同創業者でCEOのアミアド・ソトは、取締役会と経営幹部に対して数カ月先の見通しを立てるよう求めた。そして、自社のファンダメンタルズはまったく変わっていないという結論に達した。

「具体的なパターンは変化したかもしれないが、パンデミックの間も人々はバケーションレンタルを求めている。清潔さと安全性が第一であることに加えて、バケーションや短期の民泊は滞在期間が長期化し、需要が高まると判断した。当社の事業は不動産管理会社の繁栄を支援し、保証することであり、それが変わることはなかった」とソトは振り返る。

 トラベルパークのメイアは、当初のビジョンに忠実であり続けることは、同社にとってより多くのメリットがあると考えた。「資金力のある競合他社は、急ぎすぎた」

 他社が大規模なレイオフに走る中、トラベルパークがそれらの企業の法人顧客を数多く獲得したのは「他社が性急にコストカットをした一方で、当社は売上げとサービスのレベルを維持したからだ」とメイアは説明した。彼は、会社の中核を成すテーゼは変わらないと確信していたため、従業員への投資を継続することに満足していた。