コミュニティを重視する

 トラウマのサバイバーは、経験を率直に共有できる支えとなるコミュニティがあると、PTGを経験しやすくなる。

 ある研究では、心理学者がマドリードの住民を対象に、2004年に列車同時爆破テロ事件が起きた1週間後、3週間後、8週間後に調査を行った。このテロはスペインの人々を社会的に引き寄せ、多くの人が事件直後に隣人や友人、家族と自分の感情について頻繁に話すようになった。

 そして、事件から8週間後に、当初から周囲とよく話をしていた人は、住民同士の連帯感やつながりが強くなったと感じ、より大きな意義と前向きな気持ちを感じていた。

 いまほど社会的なつながりが重要になったことも、つながりを維持することがこれほど難しくなったことも、近年ほとんど経験がない。テレビ会議という新しい現実には、廊下や休憩室でひと息つく時間や、プロセスを共有する時間、雑談をする時間、ふらふら歩き回る時間など、コミュニティを育むために不可欠な要素が欠けている。

 しかし幸いなことに、離れていてもつながりを取り戻すことはできる。

 リーダーは、会議の途中に近況を確認する時間を組み込む。同僚の自宅を見たり、家族やペットに挨拶したりするなど、くだけた親密さを歓迎しよう。あるいは、子育てや家族の介護をしている人が助け合うネットワークを、リーダーが率先してつくり、悩みを話し合って情報交換をしやすくすることもできる。

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 価値観に基づいたリーダーシップとコミュニティへの配慮は、常に賢明な戦略だが、いまこそなくてはならない。いわゆるノーマルな状況では、パーパスが明確なチームほど、より精力的に、より賢く、より協力的に仕事をする。さらに、リーダーが共感を示すことで、従業員はより安全に感じ、より創造的に働き、よりよいパフォーマンスを発揮する

 この数カ月の痛みは私たちを不安定にしたが、同時に自身の姿を直視させ、上辺の快適さや型通りの方法を剥ぎ取り、私たちの本当の姿を明らかにしている。この瞬間にどのような選択をするかによって、私たちと私たちの組織の今後のあり方が決まる。

 トラウマの時代において、これらの戦略は組織が生き残るだけでなく、私たちがずっと待ち望んでいたものを構築することにつながるだろう。


HBR.org原文:Don't Just Lead Your People Through Trauma. Help Them Grow, September 14, 2020.


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