心理学者のアイザック・ガラツァー=レヴィの研究チームは、延べ数万人を調査した54件の研究を分析し、重い怪我や愛する人を失うこと、戦闘などのトラウマを受けた後の数カ月~数年間をどのように過ごしたかを調べた。その結果、トラウマを乗り越えた「サバイバー」の65%が「レジリエンス(再起力)のある軌跡(resilient trajectory)」を示し、心理的に安定した状態を保っていた。

 さらに驚くべきことに、多くのサバイバーが、トラウマの後に幸福感が増していたのだ。

 衝撃的な出来事の後、多くの人が一からやり直し、自分の優先順位をあらためて考える。自分の価値観に合わせてキャリアを変えたり、疎遠になっていた友人と久しぶりに連絡を取ったりするかもしれない。より大きなパーパスや、より強い社会的つながりを感じ、あるいは精神性を深める人も少なくない。

 これは心理学で「心的外傷後成長(PTG:posttraumatic growth)」と呼ばれるもので、ごく一般的な経験である。トラウマのサバイバー1万人以上を対象としたメタ解析によれば、その約50%が少なくともある程度のPTGを経験していた。

 自分から好んでトラウマを受けて耐えようとする人はいないだろうが、恐ろしい状況に直面したとしても、何らかのポジティブな効果があることを覚えておくとよいだろう。

 コロナ禍はさまざまな不安をもたらす一方で、多くの人がもっと持続可能性の高い生き方をせざるを得なくなり、世界中で優しさが育まれている

 ジョージ・フロイド、ブレオナ・テイラー、レイシャード・ブルックスなど、米国で次々に黒人が警察官に殺されていることをめぐる苦悩は、人種正義を求める戦いをいっそう駆り立てている。従業員は、企業の雇用と管理の慣行について平等を要求し、社会正義への取り組みを支援するよう雇用主に働きかけている。

 マネジャーやリーダーは、ひたすら回復を目指して、従業員に通常の状態に戻るように求めるのではなく、この状況を通じて自分たちの組織がどのように成長できるかという、もっと大きな問いに向き合わなければならない。

 ここでは心理学の研究結果から、その助けとなる2つの洞察、すなわち「価値観の肯定」と「コミュニティの重視」を見ていこう。