Image Source/Getty Images

新型コロナウイルス感染症のパンデミックに象徴されるように、2020年は苦しい出来事の連続であった。職場においては、リモートワークへの移行が強いられ、従業員もリーダー自身もさまざまな不安を抱えている。だが、心理学の研究によれば、私たちはつらい思いを乗り越えた後に成長できるというポジティブな効果もある。リーダーは新たな常態に向き合い、チームメンバーと前進していくために、「価値観に基づいたリーダーシップ」と「コミュニティへの配慮」の2つを肝に命じなければならない。


 この数カ月は、苦しい経験が次々に積み重なった。新型コロナウイルス感染症のパンデミック、経済の破綻、長年にわたる人種的な不正義や警察による暴力をあらためて突きつける出来事――。

 米国では2020年7月、鬱病と不安障害の発症率が2019年前半の3倍を超えた。「元気?」という単純な挨拶さえ、感情の地雷と化している。

 職場にもトラウマ(心的外傷)があふれている。誰もがリモートワークに移行して、さまざまなストレス要因を抱えている中、リーダーはチームメンバーの健康をどのように守ればいいか、頭を悩ませている。

 この状況について、トラウマに関する科学的研究は、いくつかの洞察と意外な希望を示唆している。私たちは、つらい時期からどのように回復するかではなく、つらい時期によって自分がどのように変わるかを考えるべきなのだ。そして多くの場合、そこにはよりよい変化を経験する機会がある。

 2001年10月、数千人の米国人を対象に、ワールドトレードセンター(WTC)が攻撃された後の経験に関する調査が行われた。9.11同時多発テロの記憶が突然甦る「侵入記憶(intrusive memories)」を、どのくらいの頻度で経験したか。睡眠、集中力、人とのつながりにどのくらい問題が生じたかを尋ねるものである。

 その結果、回答者の4%、そしてニューヨーク市民の11%が、あの日WTCにいなかったにもかかわらず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の基準を満たしていた。

 9.11のような出来事は、自分自身が差し迫った危険にさらされていなくても、「世界は安全で公正である」という私たちの思い込みを打ち砕く、心理的な激震になる。私たちがいかに脆弱で傷つきやすいか、そして自分でコントロールできることがいかに少ないかをさらけ出すのだ。

 PTSDはトラウマの影響として最もよく知られており、長期的に消耗して安心と安定の感覚をなかなか取り戻せない状態として説明される。ただし、PTSDは、あなたが思っているほど多くの人が経験しているわけではない。