戦略的国家備蓄は
重要な専門的能力を欠いている

 このコロナ危機の中で戦略的国家備蓄の勤勉な職員たちは、最大限の努力をしている。しかし、筆者らの調査によれば、戦略的国家備蓄には、いくつかの重要な専門的能力が欠如している。

 コロナ禍で戦略的国家備蓄の対応が遅れ、有効な行動を取れなかった一因は、人材不足にあったと、筆者らは考えている。サプライチェーンの状況を理解し、意思決定を行い、素早く承認を取りつけて、ただちに行動を起こせるだけの専門的能力の持ち主が足りていないのだ。

 戦略的国家備蓄に必要なのは、急速に変化する状況に合わせて、調達戦略を随時修正していけるエキスパートだ。アジアのヘルスケア市場における力学や、さまざまなカテゴリーの物資(たとえば、個人防護具、医薬品、ワクチン、人工呼吸器、検査キットなど)の需要と供給の変化を把握できる人物がいなくてはならない。

 また、主要物資のカテゴリーごとに専門の調達アナリストを設置する必要もある。複雑なグローバル市場において、どこで物資の不足と余剰が生じそうかを知っておくことが目的だ。個人防護具だけでなく、医薬品、特殊化学品、医療機器用の電子部品、検査キット、研究室用の物資など、さまざまな医療物資について、専門のアナリストがいることが望ましい。

 ここでも、国防総省によいお手本がある。マネジャーが調達アナリストの力を借りて、主要な供給市場の状況を押さえ、最新の出来事とリスクシナリオを織り込んで調達戦略を更新しているのだ。

 戦略的国家備蓄は、「感染症計画チーム」とでも呼ぶべき組織も発足させるべきだ。このチームは、さまざまなリスク要因に関する予測と関連させて、月ごとに備蓄の在庫状況を確認するものとする。同チームは、同様の役割を担う州レベルのチームを監督し、州単位の在庫と需要についての報告も求める。

 すでにそのようなチームを設けている州も一部あるが、ほとんどの場合、それは恒久的な組織ではない。いま米国に必要なのは、州レベルのチームを結びつける強力で恒久的なネットワークだ。いつ新たな非常事態が持ち上がっても、すぐ対処できるようにするために、それが必要なのだ。

 さらに、豊富な知識を持った人材を確保して、万全の準備をさせて、納入業者との合意内容をすべて精査させる必要もある。この面での専門的能力を強化できれば、戦略的国家備蓄はこれまでよりかなり迅速に、そして適切に問題に対処できるようになるだろう。

 本稿で提案したような変革を実行するためには、政府が強い決意を持って主導しなくてはならない。それは容易でないが、これ以外の道はないと、筆者らは考えている。

 非常事態で必要とされる物資のサプライチェーンをコントロールすることは、短期的には米国民の健康を確保し、長期的には米国のレジリエンスを高めるうえで必要不可欠なのだ。

 本稿で記した主張と見解は、著者ら個人のものであり、米国国防総省および米国空軍の公式見解を反映したものではない。


HBR.org原文:Why the U.S. Still Has a Severe Shortage of Medical Supplies, September 17, 2020.


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