戦略的国家備蓄に
適切な情報が届いていない

 戦略的国家備蓄は、危機の時に素早く効率的に意思決定を行うために、高度な計画を立て、市場を分析し、個人防護具と人工呼吸器部品の調達可能性を把握し、あらゆる重要物資の調達プランを用意しておかなくてはならない。

 そのような計画立案の前提として、さまざまなセクターから、物資の供給状況と、感染症やテロ攻撃などの想定外の混乱について、信頼性のある情報をリアルタイムでふんだんに入手する必要がある。また、そうした情報の精度を判断し、さまざまな情報を総合して判断できなくてはならない。

 戦略的国家備蓄は、これらのすべての面で十分な態勢を整えることができていなかった。

 たとえば、筆者らがタスクフォースの活動で実施した調査により、戦略的国家備蓄の在庫管理システムが創設時の2004年以降、まったく更新されていないことが明らかになった。テクノロジーの急速な変化を考えると、あまりに長い期間だ。システムがあまりに古く、バーコードを使った在庫管理はほとんど採用されておらず、手のかかるデータ入力作業を行い、内製したソリューションを用いていた。

 筆者らは調査中に、戦略的国家備蓄のスタッフがスマートフォンで備蓄物資の写真を撮っているところも目撃した。その写真を共有ドライブに保存して、届いた物資の記録を残していたのである。備蓄物資がどこに保管されていて、いつ使用され、いつ使用期限が切れるのかを知っておくうえで、このやり方は有益とは言えない。

 このような方法を用いている結果、戦略的国家備蓄は在庫を正確に把握できていなかった。備蓄物資の入荷状況、消費率、使用期限、そして潜在的な在庫不足の可能性について、的確にモニタリングできずにいたのだ。また、それぞれの州ごとの備蓄システムに、どれくらいの備蓄があるのかもわかっていなかった。

 意外なことではないが、深刻な物資不足に直面している医療機関は、物資だけでなく、情報も抱え込もうとする。どれくらいの量の医療物資を院内に蓄えているかという情報を提供したがらない医療機関は珍しくなかった。

 筆者らが話を聞いた病院経営者の一人によれば、その病院では、ある看護師がキャビネットに個人防護具を隠していたという。没収されて、ほかの病院に送られてしまうのではないかと恐れていたためだ。このような秘密主義により、戦略的国家備蓄は、どこで物資が最も切実に必要とされているのかを知ることが、いっそう難しくなっていた。

 情報収集の面で戦略的国家備蓄が最初に行うべきことは、在庫管理システムの近代化だ。具体的には、すべての在庫にQRコードもしくはバーコードを割り振り、ブロックチェーン技術を用いて在庫管理を行うようにすべきだろう。そのためには、法改正と政策の変更が必要だ。

 戦略的国家備蓄がバーチャルな「コントロールタワー(管制塔)」をつくり、備蓄が減り始めていたり、使用期限が近づいていたりする場合にすぐわかるようにすればよい。

 これを実現するためには、いくつかの要素が必要だ。物資の入荷と出荷の状況を把握するためのバーコードシステム、それぞれの倉庫でデータを集計するための倉庫管理システム、世界中の関連データすべてを集める信頼性のあるデータ保管システム、連邦政府の戦略的国家備蓄と州政府の備蓄物資すべての状況をリアルタイムで映し出すシステムなどである。

 セキュリティが確保されている携帯端末を使えば、権限を認められた人なら誰でもシステムにアクセスし、協働し、意思決定を行えるようにすべきだ。

 加えて、前述したような評議会と常設委員会を設ければ、戦略的国家備蓄は、新たに持ち上がりつつある脅威と、世界のサプライチェーンの状況について、これまでよりも質の高い情報を得られるようになるだろう。