両極をつないで「最適化」を追求する

水野学(Manabu Mizuno)
クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント。good design company 代表取締役。

ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、インテリアデザイン、広告宣伝、長期的なブランド戦略までをトータルに手がける。主な仕事に相鉄グループ全体のクリエイティブディレクション及び車両・駅舎・制服等、熊本県「くまモン」、JR東日本「JRE POINT」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、黒木本店、Oisix、NTTドコモ「iD」ほか。2012-2016年度 慶應義塾大学環境情報学部(SFC)で特別招聘准教授を務める。The One Show金賞、CLIO Awards銀賞、London International Awards金賞ほか国内外で受賞歴多数。著書に『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版)、山口周氏との共著『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』(朝日新聞出版)など。

松江 水野さんは以前から、センスとは「最適化する力」だとおっしゃっていますよね。私は「両極」を捉えた企業経営を実現させるためには「最適化」が非常に重要な要素だと考えています。

水野 ここも通じるものがありますね。「センス」というと、感覚的なものだとか天性のひらめきだ、と捉える人が多いのですが、センスって実は「知識の集積とその最適化」なんです。そして、センスを磨くには、そのジャンルの王道を見極めたり、流行しているものにできるだけ触れたりして、知識を集積することが大事です。そこから共通する法則を見つけ出し、自分なりに分析して初めて目的に合わせた最適化が可能になる。センスがいいもの=奇抜なもの、あるいは極端にシンプルなもの、といった安易な誤解もよく見受けられますが、用途や状況に対し最適化されていなければ「場にそぐわない突飛なもの」にしかならない。自分をすてきに見せるファッションセンスも、商品を引き立てるデザインセンスも、全ては「最適化」できているかどうかが肝なのです。

松江 王道を押さえ、時代の潮流を取り入れて「最適化」していく。まさに両極を捉えることで「最適化」を図っているのですね。

 今の時代は、ミレニアル世代やZ世代の台頭もあり人々が求めるものもパーソナル化しています。だからこそ、顧客に選ばれ続けるためには、それぞれにとって「最適化する力」が強く求められるということでしょう。

水野 そうですね。ただ、「最適化」を図る上で留意しなければいけないこととしては、「白」か「黒」かを明確にするのではなく、そのグラデーションまでをもデザインすることが重要ということです。グラデーションを描くにも世界観が必要。だからこそ世界観の幹は必要になると思うのです。幹がなくグラデーションを描いたとしても、消費者から共感を得ることはできません。幹があるからこそ生まれる「らしさ」、これが「最適化」につながっていくと考えています。

松江 「らしさ」もコンセプトも、両極の間の無限のグラデーションの中にある。それをいかに見つけるかが大事だということですね。まさに企業経営においても同じことが当てはまります。「両極」が増大すればするほど、経営者は「どちらか一方を選択せねば」という思考に陥りがちです。しかし「本物」を追求していくためには、一見相反するものをいかにつないで考えることができるか。この「両極」をつないで考える思考こそが「最適化」には求められるのではないでしょうか。