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危機下におけるリーダーは、より冷静に物事を見極め、新たな課題に臨むことが求められる。従来の何よりもスピードを重視する姿勢は、不確実性の高い環境では逆効果になるおそれがある。新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの期間中に調査を行ったところ、リーダーが我慢強く取り組めば、部下の創造性、生産性、そして協働力も高まることが明らかになった。リーダーが物事に対する認識をリフレーミングすることで、自身の忍耐力を高める方法を伝える。


 優れたリーダーシップを発揮するには、忍耐力が必要とされる。危機の時代においては、特にそうだ。思い通りにいかない時や逆境に立たされた時に冷静さを保てなければ、周囲は落ち着いて仕事に従事することはできない。リーダーは、直属の部下がストレスを感じていると思った場合、いら立つのではなく、彼らをサポートしなければならない。

 新しい課題に対する施策は、実行に移すまで時間がかかる。だが、筆者が将来を嘱望されるリーダーを指導したりコーチングを行ったりする中で、忍耐力がない、あるいは我慢の仕方がわからないというケースを数多く見てきた。手っ取り早い解決策を求め、戦略が効果を発揮するまで待てないのだ。

 この傾向は、何でも速ければ速いほど評価されるような、アジャイルでデジタルな仕事環境によって、ますます拍車がかかっている。

 現在のような困難な時期において、リーダーが直属の部下に与える影響に、忍耐力がどう関係するかを理解するために、筆者は、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの期間中、米国のフルタイム勤務している578人を対象に、調査を実施した。業界は多岐にわたる。平均年齢は39歳、ほぼ全員が大卒で、半分以上が自身もマネジメント職に就いている。

 回答者には、直属の上司のリーダーとしての行動や忍耐力のレベルについて尋ね、さらに自身の創造性、生産性、協働力のレベルを自己評価してもらった。その結果、忍耐力の影響が極めて大きいことが明らかになった。忍耐力を発揮した(部下の評価により上位4分の1に入った)リーダーの部下は、創造性と協働力の自己評価が平均で16%高く、生産性は13%高かった。

 次に、忍耐力がリーダーの行動に与える影響について調べることにした。

 学術研究においては、リーダーシップを「タスク志向型(task-oriented)」と「人間関係志向型(relationship-oriented)」の2種類の行動に分類する。優秀なリーダーについて調べると、一貫して両者のバランスが取れている。筆者は、最も効果的なタスク志向型の行動を「フューチャリス(futurist)」、最も効果的な人間関係志向型の行動を「ファシリテーター(facilitator)」と説明することが多い。

 フューチャリストは強力なビジョンをつくり、それを実現するためのメトリクス(指標)を設定する。ファシリテーターは協働を促進し、チームに解決を導くための力を与える。両者のアプローチは、相容れないものではなく、互いを補完する。だが、忍耐力はどちらにも同等に影響を与えるのだろうか。

 調査の結果、忍耐力はどちらのアプローチの効果も格段に高めていることが明らかになった。ただし、協働力と創造性については、ファシリテーターの行動よりもフューチャリストの行動のほうが平均して6%高かった。

 忍耐力が2つのアプローチを強化することは、次のように考えればよく理解できる。

 フューチャリストは、自分のビジョンを説明しても、相手がすぐに理解できなかったり、ビジョンの妥当性を疑われたりした時に忍耐力を要する。ファシリテーターは、チームが協働して動かなければならない場合に、チームワークがうまくいかなかったり、結果を出すまでに予想以上に時間がかかったりした時に忍耐力を要する。