巨大デジタル企業への公正な徴税を行うにはどうすればよいのかという議論も、すでに10年以上続いてきた。コロナ禍をきっかけに、その議論がいっそう切実なものになった形だ。世界の137カ国が欧州連合(EU)やOECDと緊密に協力して、国際ルールによる解決策を見出そうと努めてきた。

 新しい解決策の軸になるのは、売上高に対する課税だ。地元企業から巨大デジタル企業に支払われた売上高の一定割合の税金を課そうというのだ。

 この方法には、2つの利点がある。第1に、利益を計算する必要がなくなる。利益を課税の基準にしようとしても、巨大デジタル企業は移転価格の手法を用いて利益を少なく見せられる。

 第2に、売上高に対する税金は、それぞれの国の個人や企業が巨大デジタル企業への支払いを行う前に税金を差し引き、それを地元の税務当局に納めることになる。つまり、各国の政府は、自国の行政的コントロールの外にある企業から税金を取り立てずに済む。

 米国政府はこうした国際ルールづくりの交渉と議論に参加していたが、6月に離脱してしまった。

 米国の協力が得られず、しかも新型コロナウイルスの猛威が続いている状況で、多くの国は独自の措置を講じ始めた。それにより、税制をめぐる対立と貿易問題での緊張が深刻化しかねない状況になっている。

 たとえば、オーストリアは最近、デジタル広告の売上高に対して5%の税金を課すことにした。インドと英国は、遡及効果を持つ2%の税を設けた。スペインは3%の税金の導入に向けて動いていて、カナダもやはり3%の税金の導入を検討している。イタリアは、遡及効果を持つ3%の税金をすでに導入済みだ。

 売上高に対する税金が新たに導入された場合、その負担のかなりの割合は、米国企業である巨大デジタル企業が負うことになる。そこで米国政府は、そのような税金を導入した国に対して、報復として貿易の制限や追加関税などの脅しをかけている。そうした税制が不公正貿易慣行に該当しないかどうかの調査も開始した

 対象になった国の中には、EUに加えて、オーストリア、ブラジル、チェコ、インド、インドネシア、イタリア、スペイン、トルコなどが含まれている。フランスの事例が参考になるとすれば、米国政府のこうした動きはほぼ確実に激しい貿易戦争を生む。

 ただし、見落とせないのは、米国がフランスに追加関税を課した時、フランス産のチーズやワインを購入する米国の消費者やレストランも打撃を受けたという点だ。米国が関税措置を講じれば、影響を受けるのは相手国だけではない。その国の商品やサービスを購入している米国の消費者や企業にも影響が及ぶ。

 また、米国政府の措置に対抗して、関税を課された国の政府も米国からの輸入品に対して関税などの措置を講じる可能性がある。そうなれば、米国の輸出企業にも打撃が及ぶことになる。