ここまでの経緯

 世界銀行の推計によれば、2020年に世界のGDPは5.2%下落する見通しだという。これは過去数十年間で経験したことのない、深刻な景気後退だ。

 新型コロナウイルスは、投資の減少、失業と学校休校による人的資本の弱体化、貿易とサプライチェーンの分断を生み出し、2021年以降も経済に悪影響を及ぼし続けるだろう。各国政府は、景気下降のダメージを和らげるために思い切った措置を講じ、国民と企業を救うために財政・金融政策を実行しなくてはならない。

 巨大デジタル企業のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドットコム(「GAFA」と総称される)は長年、納税額を減らすための革新的な方法を実践してきた。この点は、多くの国の税収が減少している一因でもあるのかもしれない。

 デジタル企業はそれ以外の企業と異なり、工場や倉庫のような物理的インフラを持たなくてもビジネスを行える。政府は、このように「恒久的施設」を保有しない企業の自国における経済活動を特定することが難しい。その結果、企業の利益を把握して、税金を徴収することが困難なのだ。

 また、デジタル企業の主たるコストは、人件費や原材料費やエネルギー費ではなく、知的財産の開発費用だ。そのため、知的財産の所在地を書類上でほかの国に移すだけで、コストと利益を税金の高い国から低い国に移せる。そのおかげで、巨大デジタル企業は革新的な移転価格の手法を用いて、国境を越えた所得移転を大々的に実践できている。

 この10年以上、経済活動と課税基盤が各国の企業から巨大デジタル企業へ移る傾向が続いてきた。新型コロナウイルスの感染拡大により、その流れにいっそう拍車がかかった。

 コロナ禍で多くの企業が打撃を被ったが、巨大デジタル企業は各国の企業からさらに市場を奪い、市場でのシェアを拡大させた。この危機の中でも巨大デジタル企業の業績はきわめて好調だ。それが世界規模の税制見直しの動きを加速させている。

 たとえば、アマゾンは、コロナ禍の中で各国の小売業者から多くの売上げを奪った。もし各国の小売業者が利益を上げていれば、その国の政府に税金を納めていただろう。新型コロナウイルスの感染拡大は、それぞれの国の新聞社広告収入に壊滅的な打撃を与えた。広告収入は、フェイスブックやグーグルなどの巨大企業に移ってしまったのだ。

 その結果、各国政府はダブルパンチを食らった格好だ。

 自国の経済を再生させ、国民の暮らしを支えるために莫大な資金を投じなければならないのに、巨大デジタル企業に課税基盤を壊されて、それらの企業から十分な税収を得ることもできていない。そこで、歳入不足を少しでも埋め合わせるために、巨大デジタル企業への徴税強化に動かざるをえなくなっている。