●従業員の自己遮蔽プログラム

 企業は、有害なリーダーシップの振る舞いに直面した従業員が集団で対処しやすくするプログラムを、積極的に提供することもできる。権力への依存性と追従に関する研究が示唆するように、同じ有害なリーダーの下にいる複数の従業員が協力して、リーダーとの力関係を再構成し、威嚇的な管理者の振る舞いを抑制することができる。

 その有効な方法の一つは、同じように威嚇的な扱いを受けている同僚と連携して、重要な目標を達成するために必要な効果的で直接的なサポートとリソースを、上司が得られないようにすることだ。

 企業は、従業員の学習プログラムや相互支援プログラムを奨励したり、組織したりして、このような連携を促進できる。これらのプログラムはマネジャーを除外して、部下だけが職場の経験を共有し、有害なリーダーシップに対抗するための集団的な戦略を開発できる場でなければならない。

 たとえば、昼休みに定期的に集まり、有害なマネジャーにどのような扱いを受けているかを共有し、上司の優越感を抑制して今後の威嚇的な振る舞いを防ぐにはどうすればいいかを話し合う。部下が団結した時の力が強くなれば、上司に和解的な行動を取らせやすくなり、緊張した人間関係の力学の修正につなげられるだろう。

 さらに、このようなプログラムを通じて、従業員は互いに学びながら、重要な仕事上のスキルや知識、能力を身につけることができる。それによって、労働力としての価値が高まり、上司が自分たちに依存する度合いを高めることができる。

 これは重要な変化だ。なぜなら、権力を誇示する上司が部下への依存を高めると、部下は上司に対し、不適切な振る舞いを修正するように求め、建設的なリーダーシップの振る舞いを促せるような影響力を持てるからだ。

 中級および上級マネジャー343人とその部下を対象とした調査データの多層的分析に基づく研究から、部下がこのような戦略を使って影響力を高めると、上司の威嚇的な対応が著しく減ることがわかっている。

 企業や組織は、上司から不当な扱いを受けた従業員が適切に対抗できるように、暗黙の影響力を行使する戦術を学べる自己開発のトレーニングを提供することができる。そのための実行可能なアプローチの一つは、筆者が進行中の研究プロジェクトから得られた示唆に富む知見によると、事実に基づくナッジングを利用することだ。

 上司による権力の誇示や威嚇によって窮地に立たされた部下は、本能的に、対立するか、あるいは沈黙しがちだ。ただし、いずれも効き目はなさそうだ。むしろ、不当な扱いのせいで効果的なパフォーマンスができないと上司に示すことによって、積極的に事態を落ち着かせることができるだろう。

 これは訓練して習得できるスキルでもある。もちろん、簡単ではない。しかし、このような事実に基づくナッジングは、威嚇的な上司に、自分の振る舞いが権力の乱用であり、容認できないことを認識させて、継続的な被害を軽減することにつながる。