フックを仕掛ける    

 セレンディピティのフックは、相手からあなたに関心を持ってもらえ、相手の興味深い点をあなたに教えてくれる。そこでまず、公園の中であれズーム上であれ、印象に残るような、または人を引き込むような話題を提起することから始めよう。

 ロンドンの起業家オリ・バレットは、初対面の人と会うとき、相手と自分の共通項を浮かび上がらせるために、複数のフックを仕掛ける。たとえば「あなたはどんな仕事をしているのですか」という質問に、彼はこう答える。「私は人と人をつなぐことが好きで、教育部門で活動してきました。最近は哲学も勉強したいと考え始めています。でも一番楽しいのは、ピアノを弾くことです」

 この答えには4つのフックが含まれている。情熱(人と人をつなぐこと)と職業(教育)、関心(哲学)、そして趣味(ピアノを弾く)である。

 もし「教育関係です」とだけ答えていたら、相手が点と点を結びつける可能性は、きわめて小さいだろう。しかし、複数のフックがあれば、「奇遇ですね! 私は人と人をつなぐことを目指す会社を始めたいと思っていたのです。ちょっとお話ししませんか」といった答えが返ってくる可能性が高まる。

 相手はこうしたフックを通して、自分の生活や、自分が求めるものに関係する何かを発見して掴むことができ、セレンディピティが生まれやすくなる。また、自分が何に情熱を抱いているか、相手が大切にしていることに自分がどんな貢献をできそうかなど、「率直に自分の思いを語る」ことで、このプロセスはもっとスムーズになる。

 さらに、相手にフックを仕掛けるチャンスを提供することもできる。1つの方法は、違う角度から質問をして、思いがけない答えの可能性を開くことだ。

 たとえば(バーチャル)会議で初対面の人と出会ったとしよう。あなたはつい、「どんな仕事をしているのですか」という陳腐な質問を口走ってしまうかもしれないが、この手の質問は、相手を追い詰めてしまうことが多い。

 そうではなく、「いま、何に興味を持っていますか」「いま、何をしたい気分ですか」など、大まかな切り出し方をしてみよう。そうすることで相手も1つかそれ以上のフックを示してくれ、セレンディピティにつながるかもしれない。

 フックが役に立つのは、個人的な会話にとどまらない。イベントでも、たとえ自分が講演者でなかったとしても、フックを仕掛けることはできる。

 たとえば質疑応答の時間に、こう発言してみよう。「刺激的な発表をありがとうございました。私は〇〇の期間を体験したばかりで、〇〇の活動をぜひやりたいと願っているので、あなたの〇〇についての発言に感銘を受けました。私のような者が何をすべきか、アドバイスをいただけますか」。これによって聴衆全員が、あなたという人と人生とキャリアにどのくらい共通項がありそうかを理解するだろう。

 私の経験では、200人から300人のグループなら、たいてい数人が反応して、フックを差し出した人を探し出してくる。「奇遇ですね! 私も最近、〇〇を経験したんです」という具合だ。