もちろん、移行は簡単ではない。どの職種を永続的にリモートワークにするのかを判断する方法として、次の手順が考えられる。

 ●必要なタスクとコンピテンシーの洗い出し

 通常、タスクの集合体がいまの職種であるが、既存の枠に囚われず、重要なタスクと責任範囲を考える。たとえばマーケティングアナリストであれば、データの収集と分析、市場調査の設計、ターゲット層の評価、マーケティングチャネルの有効性評価を遂行する責任があるだろう。

 リストを作成する際は、現在のタスクだけでなく、今後必要になるタスクを予測し、すでに存在するコンピテンシーとのギャップを洗い出す。顧客からのフィードバックや人事評価データ、客観的な業績指標を参考にする。月並みなレベルで妥協せず、各タスクに求める理想的なコンピテンシーのレベルを明確にする。

 必要なコンピテンシーがわかったところで、ローカルで調達できる職種と、確保しづらい優秀な人材を引き付けるために「リモートに優しい」ポジションにする必要がある職種を検討する。

 ●費用対効果の評価

 上記の分析に、オンサイトワークとリモートワークの推定コストを追加する。算出の際には、削減された不動産関連の費用も忘れずに考慮する。

 インタビューしたある経営幹部は、この先「スペースの必要性は変わっていくだろう(中略)いま不動産にかけているお金は、社員やICT技術、顧客との関係構築に充てていないお金だ」と述べた。ただし、リモートワークには、ICT技術の整備に要する多額の費用に加えて、定期的な対面のチームミーティングやチームビルディングの場が必要になることは考えられる。

 ●長期的なリモートワークを前提とした業務の再編

 ほとんどの仕事は、リモートワークを前提に最適化されていない――少なくとも、いまのところはそうだ。バーチャルな環境では、連絡の遅延や、非同期のコミュニケーションをやむなしとしなければならない場合が多い。また、同僚の席に立ち寄って気軽に話をするような、自然な対面コミュニケーションの機会が失われる。

 リモートワークでは、非言語的な手がかり(ジェスチャー、姿勢)やパラ言語的な手がかり(話すスピード、声のトーン、高さ)を通じて伝わるはずの隠れた社会的感情を見逃しやすくなり、コラボレーションのハードルは特に高くなる。

 こうしたコミュニケーションや調整の課題を克服するには、これまで以上に明確な組織階層正式なプロセスの構築に重点を置くとよい。より詳細な職務記述書と指揮命令系統、さらに業務を遂行するためのガイドラインを迷わず作成したい。

 そのプロセスに従業員を参加させ、現場の知識を取り込むとともに、当事者意識を持たせる。そして、可能な場合は、すべてリモートで行うタスクと、すべて対面で行うタスクができるように分類して、チームを編成する。リモートとオンサイトの従業員が混在するチームは、コミュニケーションで苦労する可能性が最も高い

 リモートでのコラボレーションは、ビデオ通話を推奨する、あるいは会議の時間を短くする代わりに頻度を増やすなど、交流の接点を増やすことでも改善できる。バーチャルホワイトボード、プロジェクト管理ソフト、高品質のWebカメラやマイクなどのリモートコラボレーション用ツールやソフトの導入で、チームがリモートワークの課題に対処するのを支援できる。