●メタ自己認識

 メタ自己認識とは、さまざまな経験を特定の個人の経験にとどめず、個人、チーム、システム全体の視点で観察・描写する能力のことだ。

 ここで、個人、チーム、システム全体の視点のうち、いずれか一つを選ぶ必要はない。このすべての視点を持つべきである。自分自身の視点を持ちつつも、チーム全体の視点でも状況を見て、さらにある程度はシステム全体の視点も持つべきなのだ。

 これを実践するのに最適な立場にあるのは、たいていリーダーだが、マインドフルネスを実践できているチームでは、メンバーは誰でも、対面式の会議かバーチャル会議かを問わず、会議でマインドフルネスを高めるための機会と裁量を持つべきだ。チームの全員がチームの力学といまこの瞬間に起きていることに注意を払う状態を意識的につくり出せたとき、それは可能になる。

 規律と自己認識と集中力を高めるために、短い時間でもマインドフルネスに取り組むことは有効だ。たとえば、会議の冒頭で1分間の瞑想を行い、ひとり一人が自分の状態を確認し、いまという瞬間に集中し、その会議に臨む意図を明確化させればよい。

 しかし、それだけにとどまらず、チーム内の力学を見つめ直し、はまり込んでいる行動パターンがないか検討する機会を、たびたび設けるべきだ。

 システムに根を張った思い込みや文化的な固定観念が自分たちの認識にどのような影響を及ぼしているのか。リーダーは特に、この点をリアルタイムで認識・観察する必要がある。

 深呼吸をして、物事の流れから少し距離を置いてみる。そうすることにより、状況がいっそう明瞭に見えてくる。このようにメタ自己認識を持つことは、危機の時にはことのほか意義が大きい。危機の際には、それまでのような反応の仕方ではうまくいかないからだ。

 最後にもう一つ。チームのメンバーの誰か一人を会議で「観察者」役に指名しよう。その人物の役割は、常に大局を意識して、許容、探求、メタ自己認識を実践する方法の代替案をメンバーに意識させることだ。あるいは、議題を論じている途中のある段階で、メンバー全員に気づいたことを述べさせてもよいだろう。

 筆者らが関わった建設会社では、すべての会議室に明るいオレンジ色の椅子を1脚ずつ配置している(それ以外の椅子は、それほど派手なデザインではない)。筆者らがこの点を指摘すると、それは「顧客用の椅子」だとのことだった。

 さまざまな問題を話し合い、意思決定がなされる会議の場では、そのオレンジの椅子に着席している同僚の言葉に耳を傾ける時間を設ける。その椅子に座るメンバーは、重要な顧客になったつもりで発言することになっている。議題についてだけでなく、チームの活動の仕方についても意見を述べる。

 このような仕組みを設けることにより、チームは有益で新鮮な視点を持てるだけでなく、じっくり考える時間を取ることができる。

 チームは、次の問いを考えてみよう。

・自分自身やチームに起きていることに関して、何か気づくことはないか。

・もし自分が重要な顧客、納入業者、地位の低い社員だったとすれば、この問題をどのように考えるか。

・この会議を部外者の立場で観察しているとしたら、チームのコミュニケーション、心理的安全、固定観念、集中の対象について、何に気づくだろうか。

 チームでマインドフルネスを実践することには、確かにビジネス上の利点がある。実際、本稿で取り上げた3つの面で傑出しているチームは、心理的安全性が高く、イノベーションを実行しやすいし、退職率も低い。

 しかし、チームでマインドフルネスを行うことの意義は、これだけではない。マインドフルネスを実践できているチームは、メンバーのウェルビーイングと仕事への満足度が高い。特にいまのような時期には、それだけでもチームでマインドフルネスに取り組むべき十分な理由になる。


HBR.org原文:Why Your Team Should Practice Collective Mindfulness, August 19, 2020.


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