重要なのは自覚である。軽蔑の発作の初期兆候の一つは、あきれたと感じることだ。心の中で誰かを罵ることも、その一つだ(「ダメなやつだ」「しっかりしろよ」)。

 あざ笑う気持ちがこみ上げていないだろうか。相手を見下したり、彼らの弱さを責めたりしていないだろうか。そのような状態になると、自分と相手との間に心理的安全性を維持できなくなり、リーダーとしての有効性が弱まる。

 ストレス要因によって抑制が効かなくなる「扁桃体ハイジャック(amygdala hijack)」に、行動を支配させてはいけない。軽蔑の発作が差し迫っていると気づいたら、とにかく脳の暴走を鎮めること。まず自分の行動と向き合ってから、他人の行動についてあらためて考える。

 私がコーチングをしている別のクライアント(ジョンと呼ぼう)が、どのように対処したかを振り返ってみよう。

 大手製薬会社でナンバー2の地位にいるジョンは、新型コロナウイルス感染症が問題になり始めた直後から、この新たな危機に全力で取り組んでいた。ただし、早い段階で、彼はほかの多くの人とは異なる視点で見ていた。

 彼は最近、私に次のように語った。「恐ろしい事態です。私たちは時間と競争しながらワクチンを開発していますが、両親や祖父母は第2次世界大戦中にもっと厳しい経験をしたのです」

 リーダーシップチームについては、このように説明した。「素晴らしい人もいます。実際に前進してはいますが、いつも期待通りとは限りません。信じられないほど優秀な人たちです。でも、そうではない人は? 彼らはいないも同然です。いったい何をしているのか。やる気がないのでしょうね。私は彼らを必要としているのに。哀れですよ」

 ジョンは小ばかにするように笑い、目を丸くして見せた。「なかでもケビンのことは、私にはどうしても理解できません。とにかく臆病で、ひどいものです。家にこもって机の下でただ震えているんじゃなくて、やるべきことをやらないと」

 ジョンの話を聞きながら、私は複雑な気持ちだった。普段の彼からは考えられない態度に衝撃を受けた。

 私の知る彼は、周囲から愛されて、非常に協力的で、共感できるリーダーだ。そのジョンが突然、批判的にまくしたてていた。明らかに軽蔑の発作の兆候だった。どうしてこれほど無慈悲になれるのだろう。