DX(デジタル化)からdX(デジタルを使った組織変革)へ

 両極化の時代には、この3つのポイントでつながりをつくることが経営モデルとして求められますが、そこで重要になるのがデジタルというわけです。

 現在、多くの会社でデジタルトランスフォーメーション=DXに取り組んでいます。しかし、多くの経営者から、DXで何をすればいいのか分からないという戸惑いの声もよく聞かれます。

 そこでデロイト トーマツが提唱しているのが、「”D”X」から「”d”X」、「Digital Transformation」から「Business Transformation with Digital」への転換です。小文字のdにしたのは、デジタル化は目的ではなくあくまで手段であり、真の目的はビジネスの変革にあるというメッセージです。

 コロナショックさなかの現在、あらゆる組織で変革が強く求められています。それは、単に需要が落ち込んだというだけでなく、ポストコロナにおいても、既存の事業が元通りに回復することはないという多くの経営者の見方によるものです。この危機感から、企業の事業構造そのものを変革する「ポートフォリオトランスフォーメーション」が非常にリアルな経営課題になってきています。

 では、ポートフォリオトランスフォーメーションとしてのdXの全体像をもう少し詳しくご説明しましょう。下記はdXをどのように展開するかを説明するためのフレームワークで、4+1の枠組みで構成されています(図表6)。

 左上のA「社内業務の自動化(業務生産性向上)」は社内業務の自動化です。これをビジネスモデル全体、バリューチェーン全体に展開していくのが、B「バリューチェーンのデジタル化(業務付加価値向上)」です。現在デジタル化に取り組む企業の大半は、ここが目標になっていると思います。

 しかし、dXの本質からすれば、それだけではまだ完成形とはいえません。図表右側のC「既存事業のビジネスモデル変革」の段階では、既存のビジネスの価値や顧客との接点の在り方にもメスを入れ、事業構造を根本から見直します。そして、さらにD「新規事業/イノベーションの創出」では、デジタルの力を駆使しながら新しい事業を生み出します。dXとはここまでが全て含まれるというのがデロイト トーマツの認識です。

 以上の4つの実現には、プラスワンとして、E「企業文化のトランスフォーメーション」が必要になります。組織と人材のデジタルへの意識を強化し、企業文化そのものも変えていかなければなりません。

 デロイト トーマツで3万人強を対象に調査2を行ったところ、世代や階層、組織といったところで、デジタル化を進める上での認識のギャップが生まれていることが判明しました。このギャップにおいて、データが共有されているか、また活用できているか、さらにはそういう環境が整備されているか、そのような観点から組織を見直してみれば、そこにはさまざまな課題が浮かび上がってきます。大勢で集まる会議やオフィスに縛られた働き方、年功序列的な制度、経営の意思決定におけるプロセスなど、こうしたものを変えていくのがデータの力であり、その解決を積み重ねていくことで企業文化の変革が実現するのです。

 こうして経営からじかに現場の情報が見えるようになっていくと、dX全体がさらに加速します。デジタル経営の成否は、データをテコにしながら新しいつながりを生み、事業や組織、風土といったものをどう変えていくかにかかっているのです。そのためにはマーケティング、サプライチェーン、ガバナンスといった各領域において新たなつながりを生み出すためのデジタル化が必要となりますが、その具体的な方法については『両極化時代のデジタル経営』にてご紹介しています。一方で経営者は、dXの全体像を俯瞰しながら、自社が現段階においてdXの枠組みの中でどこに力点を置いているのか、さらには次に何を目指さなければいけないのか、目標とその道筋をしっかりと描きたいところです。