両極化の時代に求められる新たな経営モデル

 この両極化の時代に向き合う新しい経営モデルを考える上で、3つのポイントが重要だと考えています(図表2)。

 1つ目は、両極化が進み、先行きが読みづらい不確実な時代にあって、経営の時間軸をどう設定していくのか。これは全ての経営者に重要視されている問題です。

 ご存じの通り、日本企業では、長期ビジョンを掲げつつも、実際には3年から5年スパンの中期経営計画がよりどころとなっているのが実情です。私は中期経営計画の存在自体を否定するものではありませんが、変化が激しく不確実な時代においては、中期経営計画一本やりのかじ取りでは、先行きが危ういと考えています。

 では、例えば、シリコンバレーをはじめとする、海外のグローバルなスタートアップはどのように時間軸を捉えているかについて、デロイト トーマツではズームアウト・ズームインという考え方を提唱しています(図表3)。

 ズームアウト・ズームインとは、経営のマネジメントサイクルにおける長期と短期、超長期と超短期をつなぐマネジメント手法のことです。ズームアウトでは、将来の時間軸として10年、20年、30年先を設定します。そこから読み解いたメガトレンドから自分たちの事業の在り方を考え、長期ビジョンを策定します。一方、ズームインでは、足元の3カ月から半年、1年先を精緻に捉えて柔軟な経営のかじ取りをします。

 私が10年以上前に担当していた、ある外資系企業では、このズームアウト・ズームインを地で行く経営スタイルを取っていました。1年のうち半年は、20年、30年先のメガトレンドを読み解くことに費やし、残りの半年は目の前の6カ月、来年度の事業計画をどうするかを議論するというマネジメントサイクルを徹底していました。

 この企業は半導体系のメーカーでしたが、ご存じの通り半導体業界は非常に変化の激しい世界です。一方で、大胆な長期的な投資も求められます。こうした環境におけるマネジメントとして非常に革新的でした。こうした長期と短期という両極をつなげる時間軸の発想が、まさに今、多くの日本企業に求められていると思います。

 2つ目のポイントは、ステークホルダーとどうつながり、エコシステムをどう築いていくかです(図表4)。

 従来型の経営戦略においては、同業他社を競合と見なしてきました。しかし、API(Application Programming Interface)エコノミーの進展に象徴されるように、これからは業種や企業の垣根を越えてサービスが展開される世界に向かっていくはずです。こうした環境やマーケットの変化を前提にしながら、自社のポジショニングや競合と見なすべき企業、また自社にとってのパートナーを再定義し、エコシステムを再構築していく。こういった戦略が経営上、非常に重要になってきます。

 3つ目のポイントは、どのようなパーパスを設定するかです。パーパスとは、従来のミッションより、もう一歩踏み込んで、自分たちが社会にどう働き掛け、どのような社会を実現したいかを定義するものです。ひと言で言えば、社会に対して能動性を持った大義です。時間軸の長期と短期、また自社と他社をつないでエコシステムを築くには、「何のために経営をするのか」という大義、すなわちパーパスが必要になってきます。

 パーパスは、社内で多くの従業員と絆を築いていく上でも重要な役割を果たします(図表5)。特にミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若い世代には、自社の社会的な存在意義を重視する傾向があり、こういったメッセージを経営トップから直接聞きたい、もしくはそういう関係性を会社と築きたいといった意識を強く持っています。良くも悪くも、従来型の社内の組織編成やキャリアパスでは、従業員と経営層のエンゲージメントを築くには限界が来ています。

 今後は、パーパスを一つのよりどころにしながら、従業員と会社、経営層と現場をつないでいく。そうした意識を持って、経営や組織を変革していかなければなりません。